帰らない黒猫
(′・ω・)第九話、大きな黒猫、小さな黒猫(そのご)
トントンと、上がっている。頭の上で、甲高い声が響き、肩甲骨から下はゆらゆらと宙を漂っている。私の尾だけは、いまだに抵抗を続けて、りっちゃんと呼ばれた女子の太腿を叩いているが、当の私はむくれ面で諦めていた。めぐと呼ばれる女子が、弥勒の部屋の扉を開ける。
「お?何だ黒。もう掴まったのか。もう少し粘るもんだと思ったんだが。」
わざとらしい笑みが、立ちはだかった。
「めぐみさん、りんさん早く、早く!」
下心の見え隠れする、サルのような笑みもその奥にある。
女子は、顔を見合わせると、お邪魔しますと一声掛け。すっと中に入った。中心には、いつの間にかチビの姿もあった。
勉強会、なのだという。ただ、学ぶ状況で、一向に離してくれないこの女子は、果たして学ぶ気があるのだろうか。胡坐で、男勝りな勝呼。前足と胸はあい変わらす不自由に拘束され、幾ら引っ掻こうが噛み付こうが痛がる様子も無く、返って苦しく挟まれるばかり。あぁ、チビが羨ましい。弥勒の一腿の上に載って、すやすやと眠っている。長方形の机を囲ってまぁ、賑やかにだな・・・。
「りっちゃん、この問題解けた?」
「ん~、そこはねぇ~・・・・。よっと。どだ!!」
「え!?そこ違うだろ?」
「なにいってんだ?一宮。お前が間違ってんぞ?」
「うっそ!」
「ほれ・・・。」
「・・・・ありゃ。え、ちゃんと転回したのにどこで間違えたんだ?」
「ふっふ~ん。Xの分解でここを間違えていれたでしょ!」
「え~・・・?」
「んと、一宮君。ここをね・・・?」
「あ~、めぐ!いいってサルにモノ教えなくても!」
「え、でも・・・。」
「下心丸出しのこいつには!!ロック、そのチビ貸して?」
「ん?今、寝てるんだが・・・。」
「いいからいいから♪」
「リン、なにすんだよ。」
「そうだよ、りっちゃん、一宮君に子猫をどうするの?」
「言っとくが、お前の悪巧みに填まる一宮様じゃないのだ!!」
「あっそ・・・。よいしょ。黒はお疲れさん。」
「ほらよ、折角気持ちよく寝てたのにな・・・。お前も不幸だな。黒と一緒で。」
「・・・・・・・。」
「ふみゃ!?」
「おーしおしおし。こっちおいで~。いいかぁ~チビ黒ぉ~?あの、汚らわしい悪魔を、お前の聖剣で切り裂いて来るんだ!!」
「みゃ?」
「ほい!サル!!ちゃんと受け取れよ!!」
「え!?ちょ!高く放り投げすぎだろ!!リン!」
彼女から開放されて弥勒の後ろに座り、一部始終を見ていた。チビは、どうやってか弥勒の親友の受け手をくるりとかわし、ものの見事にしかも大の字に胸に飛び込んだ。と同時に、一宮の絶叫が部屋中を埋め尽くす。当たり前か、子猫とはいえ、爪は爪。其れが、四肢全部、がっちりと胸に食い込むのだからな。気の毒な奴だ。