風前の牙
だらだらと草木に垂れ流した
血印の先に
荒げる息と
唸り声を混ぜた
獣が居る
おもむろに手を伸ばせば
最早、覚束無いと思われた瞳を開き
こちらに牙を向ける
助けてあげたいだけなのに
私の手は
払い落とされたのだ
ただ、眺め
ただ、見守り
悶える様(さま)を焼き付ける
この時間が
とても長く苛苛するものだ
まるでそう
自分が目の前で苦しみ
もがくような
錯覚に陥ってしまう
やがては動かなくなる
霞む吐息だけを周囲に溢し
いつ途切れてもおかしくない姿に成り果てた
それでも尚
私に向ける牙だけは
殺伐として、この命を狙っている
風前の灯の中でも
自らの道を託すまいとしているのだろうな
本当に強いよ
お前はな・・・
開ききった瞳を見つめ
風に揺られる毛並みを眺めた
ゆっくりと
ゆっくりと近づく
今だ乾かぬ涎に濡れた牙が
諦めずに
私を睨みつけていた
すべてが
土の中に埋まってしまうそのときまで
ずっと・・・
ずっと・・・
by幻想師キケロw