見えない掌
時計の秒針が刻む音
私の、この胸が刻む音
ゆっくりと
ゆったりと重なって
この部屋の時間を進めている
賑やかな毎日が静寂に変わる
休日
何も考えず目覚め
何もすることなく寝そべったまま
深く、呼吸する
あぁ、いつまで生きているんだろう
あぁ、まだ、生きているんだな
そんな、生きられない人に怒られそうなことを
平然と考えてしまう私が居る
日が高くなるにつれて
部屋の墨に蹲っていた闇が
立ち上がり
子供のように寄り添ってくる
甘えてくる
誰もいないはずなのに
冷たく
心地よい
静かな掌を
すっと羽で撫でるかのように
重ね合わせて・・・
散らかった部屋
私だけの部屋
でも、其処に私が居ないように思えて
たまに咳払いをする
冬も終わり
優しさと厳しさが
空の上で顔を合わせているに違いない
そんな鉄道の中にでも居るような妄想を
天井に映し
ふっと笑った
もっさりと起き上がり
だらりと着替えを始める
誰にも見せるわけでもなく
褒められたいわけでもないから
素朴でどうでもいい組み合わせを選んで
玄関の扉に手を掛けた
闇が、面倒だよと服の裾をひっぱりごねてくる
けれども
誰かに押されるかのように
私は
私の身体は
踏み出した
眩しくて目が眩む
晴れた日の外の世界へ
過ぎる景色を眺め
心のどこかから
やっぱりと言っていいくらいの
恐怖が込みあがる
人の目
人の波
急かす車のクラクション
突き刺すような鼓動と
押しつぶされそうな気持ち
ただ、足は止まってくれそうにない
見えない掌が
ほらほら進むと、押しているからだ
ちょうどそう
肩甲骨の辺りを
あったかくて
力強くて
なんとなく懐かしいのだけれど
振り向けば
やっぱり誰もいない・・・
誰の掌なのだろうかと
私は首をかしげ
押されるがままに
どこかを目指した
by幻想師キケロw
傷は癒えても、心の傷は一生残るもの。それを、実感する今日この頃の私です。