帰らない黒猫
(′・ω・)第六話、猫に戻った猫(そのはち)
賑やかな声がする。太い腕の中に収まって、ゆらゆらと揺れながら、無精髭をじっと見つめ、腕からはみ出た尾を、ちろちろと小刻みに振った。
「せんせ、こんちゃーっす。」
「おう。」
「あれ、橋本先生腕のそれ猫ですかぁ?」
「おう、そうじゃ。」
「きゃあああ!何これ!可愛い!!」
「お、おい、こら。」
「触ってもいいですかぁ?」
「噛み付かれようにのう。」
「え~。噛むんですかぁ?」
「おう、ほれ。さっき噛まれたんじゃ。」
「・・・・。わかんなぁ~い。先生の手、岩みたいだから無傷じゃん。」
「わっかるぅ。キャッハハ。」
「どういう意味じゃ、おんしらぁ。」
「やっべ、ふわふわぁ~。」
「ふぅ・・・参ったのう。」
「あっれ?橋本先生じゃないっすか。」
「おう、天神。おまぁもこれから飯か?」
「そうっすけど・・・。その猫、橋本さんのだったんすか?」
「わしのやない。ちぃと訳ありの猫なんじゃ。さっき、窓から逃げたいうん野良猫はこいつやろ?」
「えぇ、まぁそうっす。」
「別におこりゃあせんで、ワシもメモ書き一つあげときゃよかったんじゃからのう。」
「いえ、すんませんほんとう。」
「食堂、どうじゃ?」
「あれ?愛妻弁当はどうしたんすか?」
「そんなもん別腹にきまっとるじゃろう。ガッハッハッハ。」
「んじゃ、さっきの侘びも含めて俺、奢りますよ?」
「あ!じゃ、先生私もー。」
「え~、私にもおごってー。」
「おいおい、お前らは自分で食え!」
「え~~~。」
毎度のことながら、今の子供らは元気がいい、耳がキンキンする。しかも、こんな顔が近くにあって出されるのだから、こちらとしてはたまったものではない。しかし、すっぽりと収まっているせいか、この子らの手を防ごうにも、自分の肉球で相手のその掌を、軽く押し返すことが精一杯で、後はされるがままであった。なんとも、無力。そう、思える一瞬だった。