帰らない黒猫 | 梟霊のブログ

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帰らない黒猫
(′・ω・)第三話、猫のような猫(そのに)
 
 
 
 
 がやがやと、賑やかになる教室。黒板のちょうど真ん中の上、時計のあの針が五から六へと振り下ろされるとき、【ちゃいむ】と呼ばれる変てこな鐘が鳴り響く。彼はといえば、肩を大きく上下させ、眠っている。まぁ、朝が朝だから、しかたがない。私は、両の前足を綺麗に並べ、その上に自身の顎をくっつけて、目だけで辺りを見ている。何せ、楽しみの現代文以外は、ここから降りることは無いからだ。一言で言えば暇である。暇だからといって、自由気ままに歩けることはない。この糸が、邪魔をするからだ。要するに、何もできないのだ。彼が、厠にいく程度なら、この糸が現れても首を引っ張ることは無いし、面倒だと想っている体育も、共に動き回ればさほど問題にもならない。まぁ、面倒といっても動くことに関しては猫だから、とうことで片を付けてくれ。
 鐘の音が、鳴り響く。ガラリと戸を開けて入ってくるのは、先生と呼ばれる大人。不思議と寺子屋を思い出すのだが、なんたってそれの時代からかなりの年月が経っている。子供達の髪型から服装まで、実に裕福になったものだ。それに、なんというか先生と呼ばれるものは、子供達よりどうやら縛られているようで、幾らふざけていても、声を掛けるだけで終ってしまう。昔は、猫でも騒いでいたのなら石やら樹の枝やらいろんなものが飛んでいったものだが、はたして良い世の中になったと言っていいものかどうか、判断に迷う。
「日直!」
「起立、礼、着席。」
「・・・・・。しかし、よく眠る・・・。これだけの音を出されたら、普通は飛び起きるものだが。」
「一宮ぁ!」
「はい!先生!」
「そこの馬鹿ぁ、起こせぃー。」
「了解しました!!!」
「・・・・・。いい加減学習すればよいものを。」
パンといういい音が、教室に響き渡る。あるいみで彼の始まりの合図だ。あぁ、そう、どうやって起こしているかだったな。なんてことは無い、普通にゆすっても起きないものだから、一宮と呼ばれる少年が、ノートと呼ばれる紙の束を丸めたもので、思いの限りを込めて後頭部を叩きつける、それだけのことだ。
「んあ・・・・・・?」
「いよう!ロク!」
「はぁ、・・・・なんで毎回毎回、御前の万弁の笑みを見なきゃなんねぇんだよ。」
「見たくなきゃ、起きてりゃいいだろ?先生、起こしましたぁー。」
「うむ。いい夢見れたか?ロク。」
「・・・。おかげさまで・・・・。」
「では、ホームルームはじめようか。」
 まったく、家の中ではあんなにもしっかり者なのに、学校の中ではだらだらとしたもので、その影すら見えない。私が思うに、普通、逆なのではないかと言いたいところ。だが、居候がそこまで言う必要はないだろう。
 先生と呼ばれるものが、一人一人の名前を読み上げていく。生徒たちは、さまざまな色の返事をして答える。なんというか、ずいぶんと様変わりした。初めて弥勒と並んで登校したときは、目を丸くして、あれはなんだこれはなんだと聞いたものだが。今となってみれば、たいしたことではない。これが今の学校(てらこや)なんだと、納得している。
 ホームルームと言うものが終れば、まもなく授業だ。日程表と言うものを見れば、一限目は生物。なんでも、めんでるの法則やらなにやらを学ぶらしい。二限目は、なんと読むのだろう。古、古、わからん。忘れた。後で弥勒にでも聞くさ。三限目は、選択科目。そうだった、体を動かすものにこれがあることをすっかり忘れていた。四限目、体育。五限目、数学。六限目、英語。はぁ、現代文は、無い様だ。つまらん。せめてこの糸が伸びてくれたなら、図書室と呼ばれるところで油を売るのだがな。が、いまだ伸びるとも切れるとも判らないものだから、しょうがないのだろう。付き合うしかない。はぁ、早く帰る時間にならないものだろうか。時計を見つめ、大きく溜め息をつく私が居る。
 猫が、狸のまねをするというのはどうかと想う、今日この頃。まだ一週間ほどしか経っていないというのに、最早飽きている。野良だったころは、どこへなりとも歩いていけたから、暇と言う言葉は無かった。だが、今は、目を閉じて、耳を左右動かして聞いているだけだったり。たまに顔を、前足で撫でてみたり、腹を天上にして、世の中を逆様に眺めてみたりと、いろいろ蠢いている。稀に、調子に乗った時などは、あの狭いところから落ちたりもするが、静かな教室の邪魔をしているわけではいのだからいいだろう。ただ一人を除いてはな。あぁ、そうだ。その一人とは弥勒のことだ。授業を受けているときの彼は、まぁ真剣といえば真剣なのだろうが、どこか上の空だったりもする。そのため、私が後ろでざわざわしていたり落ちたりすると、睨まれたり、呆れ顔をされる。また、興味が湧くことがあれば、彼の机の横にちょんと乗っかって、その教科書を尾を振りながら眺める。大抵は、邪魔だといわんばかりに彼の腕に払われるのだがな。今日は、別段そうでもないらしい。少し、不気味だったので顔と教科書を言ったり来たりして眺めていると、私の御凸を人差し指でこつんと叩き、親指で上がっていろとでも言う感じの動きを見せた。やっぱりか、と渋々上に上がるものの。やっぱり気になるので、また降りて、今度は窓際に座り、眺めていた。邪魔ではないのだが、気に障るらしく、不機嫌になっているのは見れば判った。
 体育、猫の反射能力と運動能力がものをいう。と想うだろうが、実のところそうでもない。今、野球と言うものをやっているのだが、守備側だと彼の動きに合わせて走っていればいい。だが、攻撃側だと、鉄色の棒を握る彼の反対側に何時でも走る体制で構える。彼が打つ、思い切りよく走り出す。ふぁあるの声と同時に糸がピンと張り、私は宙を舞う。さらに、彼が打つ、ふぁあるの声が無い。彼が走り出す。もちろん追い越す。二塁と呼ばれるところにカクンと曲がる。私は、その角度に反応しきれず、ゴロゴロと転がって引き摺られる。この様なことが何度も起こる。彼は、それを見るたびに大きく溜め息をつく。失敬な、だが人間の遊びは、先が読めなくて困る。そればかりはしょうがないと笑ってほしいものだ。
 昼は、賑やかな教室を上から見渡すだけ、食べ物を頬張り、楽しげに話す姿は、いつの世も同じだ。
 英語、今日は賑やかな金髪は居ないようだ。念仏と間違えそうな声で、教科書を呼んでいく様は不気味である。彼は、寝ている。教科書を立てて、起用に、隠れるようにして眠っている。そこまでして寝るくらいなら、私のように堂々と寝ればよいものをと、思う事幾度目か、彼の横に立ったまだ若い男性の先生が、朝の少年のように持っていた教科書を丸め、彼を叩いた。
「あ、おはようございます。影丸先生。」
「おはよう、ロク君。今はピーの四十五の三行目だ。君一人で、そこから最後まで読んでみなさい。」
「・・・・・・・・、はい。」
 この時ばかりは、様ぁ無いと含んで笑ったものだ。しかし、その後の彼は、平然と読みきった。私は、目を丸くして、髭をぴんと伸ばし、両の手に乗せていた頭を起こして、感心したものだった。この手が、人の手であったなら、あの影丸と呼ばれた男のように拍手していただろう。それほど、見事なものだったのだ。理解できていない私でも、驚くほどにな。実は、結構頭が良いのかも知れぬと、小さな鼻を大きく広げぐるぐると喉を鳴らした。
 放課後、彼はそそくさと家に向かう。他のものが、校庭や他の部屋に集まって何かしているのに、彼と他の帰路につく若者は皆、帰宅部と言うものに属しているらしい。何のことかさっぱりなのだが、とりあえずそれもまた活動の一環なのだろう。私は首を捻りつつ、朝と同じく、自転車の籠に入り、彼と共に家に向かうのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw
つづく