帰らない黒猫 | 梟霊のブログ

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帰らない黒猫
(′・ω・)第二話、家猫(そのさん)
 
 
 
 逆様になった世界が、私を真ん中に揺れている。掴まれるという感触は無いのだが、なんとなくきゅうきゅうと締め付けている感覚はある。下を、普段なら見上げるはずの目線で眺めた。だんだんと、遠くなっていく。まるでそう、天国までの階段を、疑似体験しているようだった。我ながら、なんとも可笑しいことを言うものだと、心の中で笑った。弥勒の部屋と思われるところまで来た。普段なら地面を見る要領で、彼の顔を見上げた。どうやら、案の定といったところだった。扉が開かれると直ぐ、放り投げられた。落ちたところは、ふかふかの大地。どうやら、布団のようだ。久しく潜り込んだ事無かったものだ。懐かしい。
「おい・・・、黒猫。」
そう呼ばれて、私は、弥勒のほうを改めて見上げた。こめかみに、血管が浮き出ているようにも思えるが、気にしないことにしよう。不可抗力なのだから。と、言いつつ、私の顔は、気まずそうにそっぽを向いた。いつもなら、ご機嫌に風を掴む自慢の尾も、元気なく先端だけを動かしている。
「おい・・・、黒猫・・・、何か言うことはないか?」
いやまぁ、言いたいことは山ほどあるのだが、そのどれもが弥勒自身を逆なですることになる珍妙な言い訳になってしまう。さて、どうしたものか。前足を折りたたみ、ちゃっかりとその心地よさに座り込み、考えた。しかし、そうそう良い案と言うものは浮かんでこないのも事実。前足に顔を乗せ、どうせならこのままと瞳を閉じて、逃げようともした。が、許されるわけも無く、首根っこをつかまれ、再び宙吊りになった。
「おいこら・・・、何図々しく人のベットで寝ようとしている・・・。」
こうなるのは、当たり前か。私の鼻先に、どんと近づいた彼の顔は、怒っている以外に言いようが無い。私は、ついに降参したとでもいう風な声でどうしてこうなったかを一から伝えたのだ。
「実はな?弥勒、私にもさっぱりなのだ―」
私は、人で言うじぇすちゃあと呼ばれるものができない。手や足が無いからだと考えているからだ。だからそのほとんどを、体の動きや、瞳の大小、角度などで表現する。弥勒は、最初は私をぶら下げたまま聞いていたのだが、そのうち布団の上におき、角ばった机の近くの椅子、背もたれを抱きしめるように奇妙に座った。そのままでも、私の話は終らず、彼は、腕の上に顔を乗せ、縦一列にその眼を並べ、じっと私を見ながら聞いていた。
「ロクー?ご飯できたよー?降りてきなさい。」
「んあ?あ~い。」
「と言うわけでだな―」
「あぁ~、・・・ちょいと待て。続きは後からだ。・・・・・・・、はぁ。ま、大体は理解したが。」
「では!!」
「おい!誰も許すとは言っていない。おとなしくここで待っていろ。」
弥勒の母の一声で、私の言い訳は、一度途切れた。面倒臭そうに、返事をする弥勒。ゆっくりと立ち上がり、私に指を刺して言った。私は、解放されると期待を胸に耳を立て彼のほうをキラキラとしたこの瞳で見つめたが、なんの役にも立つことも無く、部屋にぽつんと残された。カチコチと凝り固まった時計の音と、奇妙な数字が浮かび上がった四角い箱の二つに挟まれて、私は奇妙な感覚の中にいた。なんというか、そわそわするというか落ちつかない。わくわくするような、締め付けられるような。やはり、ずっと昔に何かあった気がするが覚えてはいない。仕方なく、この体をむずがゆくする衝動を抑えるべく、私は扉に耳を当てて、微かに聞こえてくる人の会話と言うものを楽しむことにした。
「ねぇ?ロク。」
「ん~?」
「あんまり変なものを家の中に入れちゃダメよ?」
「変なもの?」
「そうよ。変なもの。」
「真っ黒だったり、生き物だったり」
「は?そんなものいつ家に連れ込むんだよ。かあさんじゃ在るまいし。」
「・・・・・・、ロク。あなたも固くなよねぇ。」
「なにが?」
「べつにぃ、こんな若い母親なんて世間でも羨ましがると思って!」
「いろんな意味でな。」
「何よそれ。」
「さぁな。」
「それより、リコしらない?」
「あぁ~・・・、アイツなら友達の家にいくってメール着てたぞ。」
「また?」
「いんでないのぉ?」
「だって、もう8時過ぎるわよ?」
「遊びたい年頃なんだよ。」
「・・・・・・、ふぅ。なんだかなぁ。誰に似たのかなぁ~。」
「間違いなく、かあさんだろ。」
「・・・、それは何かしら、私が遊び人とでも言いたいの?」
「え?違うの?」
「・・・・、もういい!!」
「あ、そう」
「あ゛~もう!!、どうしてこう!」
「たっだいまぁあ!!」
「ちょ!リコぉ!何時だと思ってんの!」
「ごっめ~ん。お・か・あ・さ・ん♪」
「そうだぞ?リコ。あんまり遅いから、かあさんのおもちゃにされそうになったぞ。」
「な゛!!」
「あれ?にいさん、なんだか不機嫌?」
「べつにぃ?それより、飯食うか?」
「ん~、んしょっと。今日のなに?」
「肉じゃがとその他残り物。」
「んじゃ、先お風呂入る。」
「へいへい。あ、またかってに俺の部屋に入るなよ?」
「は~い。よっと。」
「はぁ、あんたたちなんだか夫婦みたいだわ・・・。」
「へへへぇ~、そうでしょう♪」
「・・・・・・。なに?かあさん。その羨ましそうな眼。」
「な!なんでもないわよ!!」(何よ。母親として認めてはくれないくせに・・・)
「っそ。」
「お母さん、お父さんいるんだから浮気はメ!だからね!」
「もぉ~!ナンなのよ。二人して!!」
「かあさん、あんまり興奮するな。口に物入れながらしゃべるな。」
「はい・・・・。」
「や~い、怒られてやんの!」
「!!!!!!」
「リコ、いい加減にしろ。さっさと風呂入って、飯食え。」
「はい、はい、はい、はい。いま行きますよーだ。」
「・・・・。・・・・・。・・・・。なんなのだ?この家族は。」
楽しむどころか、何かこう、複雑なものが見え隠れしてるように思えてならなかった。話は変わるが、奇妙な数字が浮かび上がった箱は、どうやら時計らしいことがこの会話でわかった。つまらないものだ。音がしないものだから何かの、いやそれは言わないで置こう。それから、トトト、と軽い足取りで階段を足早に上がってくる音がした。間違いない、彼の妹であろう。だがまぁ、さっき弥勒も釘を刺していたから、入ってくることはあるまいよ。
【トトトトット、ットット・・・・・・・】
足音が、この部屋の前で止まった気がした。
「ん?」
「はいばぁーーーーーーーん!!!!!!!」
人と言うものは、理解しがたい。注意されたことを、こうもたやすく引きちぎってくれる。とっさに体がドアから離れた。が、間に合わず。軽い体が禍し、横回転しながら縦にも回るという、恐ろしい経験をしてしまった。猫と言うものが着地に失敗するなど、ほぼ皆無なのだが、こればかりはどこが地面なのかさっぱりわからなかったのだ。
それほど長い距離を飛ばされたわけでもないのだが、どういうわけか此処のものは透き通ることができないらしい。そうでもなければ、この心地よいもの二つに挟まれるという事は無いのだから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw