帰らない黒猫 | 梟霊のブログ

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帰らない黒猫
(′・ω・)第二話、家猫
 
 
 私は、顔を真っ赤にする小僧を尻目に、自らを名乗った。小僧は、何か言いたげだったが不機嫌に名前を応えた。
「弥勒・・・」
「ぬ?なにか言ったかな?」
「弥勒純也(みろくじゅんや)だ!これでいいだろ!?さぁ!もう付きまとうのは止めろ!」
人間をからかうのは、いつ依頼だろうか。パンを盗んで痛い目を見たころだろうか。思わず頬に笑いを含ませた。そして、そのまま応えるものだから、小ばかにした風に成ってしまうのも当然。小僧はますます不機嫌になる。
「あぁ、そのことか。大丈夫だ。確認したいことはもう終った。小僧が、それを言わずとも居なくなるよ。」
「け・・・。」(猫の癖に馬鹿にしたような口ぶりだ。)
「ところで・・・」
「なんだよ。」
「黒スケとは、私のことか?」
「は?御前以外に誰がいんだよ!」
「ふむ、そうか・・・なるほどな・・・」
ふと、自分が何を口にしたのか解らなかった。私といっているものが意識とするならば、無意識とはナンなのだろうか。別段気にも留めてないどうでもよいことを、なぜか溢してしまったのだ。茹蛸のような小僧は、怒りから呆れ顔に様変わり。腰を折られたという表情だ。いや、むしろ、猫に剥きになってること事態馬鹿馬鹿しいといったほうが正しいのだろうか。そこから、暫く沈黙が続いた。
 
 丸い入れ物の中で蠢く針が、立て一線になったころ。小僧、あ、いや、弥勒と言うのだったな。弥勒は、本をタンと軽い音と共に閉じて立ち上がった。そういう私は、傍らで静かにその本を眺めていたが、立ち上がり本棚へと返しにいく弥勒を目で追った。普通の猫より少し長い尻尾は、ゆらゆらと波立ち始め、やがてはすらりと天を見上げる。弥勒は、ちらりとこちらを見た。そして、大きな溜め息を突いた。
「なぁ、御前、居なくなるんじゃなかったの?」
誰もいないと図書室に、篭った声が伝わった。
「む?御前ではない、スムールだ。だがまぁ、いきなり呼ぶのもあれだろうからしばらくは許そう。そうだな・・・。居なくなるさ。気の向いたときにな。」
私は目を細めて、彼を見つめ年寄った感じ声を変えて答えた。私から目線をそらし、ふうんと言う弥勒。何を考えているのだろうか。クンクンと、私の好奇心を釣り上げようとするなにかがそこにあった。
 帰り道。当然一緒である。誰もいない、民家と言うのは実のところ弥勒の四、五軒先である。まぁ、並んで歩く必要性はないのだが、今日の気分と言うことで型をつけてくれ。だが、弥勒にしてみればそうでもないようだ。
「なぁ、いつまで着いて来るんだ?」
「着いてきているのではない。帰っているのだ。私もな。」
「は?帰る?御前の場合、昇天(かえ)るの間違いだろう?」
「それができていたのなら、とっくにしている。」
「・・・・・・。そうか・・・。」
私は、並んで歩いてはいても、壁を抜けたり出たり、壁の上に上ったかと思えば、降りてみたりと。せわしなく動き回っている。ただ、横から前にいくことはなかった。なにせ、あんなに冷たい壁が前を歩いていると、どうにも行くに行かれない。街路灯が、ポツンポツンと淋しくなってきた。電線というものを揺らさずに歩いていると、急に立ち止まった。どうしたと呼びかけると、振り返り、私の顔をしっかりと捉えて御前と会った場所だと若干荒げて答えた。また、歩き出す。
弥勒の家が近くなる頃、せわしく動くのも飽きていた。トコトコと、どこからどう見ても普通の猫にしか見えない姿で歩いている。
「なぁ・・・。」
「なんだ弥勒。」
「御前、なれなれしいな。平然と名前で呼ぶなんて。」
「何を言う。名乗ったからには名前で呼ぶ!普通のことであろう。」
「いや・・・・。弥勒って苗字だし。名前は純也だし。」
「しかし、教室とやらの人間は、皆、ロク、ロクと言っていたぞ?」
「そうれは・・・・、友達だし、よく知っているからしょうがないだろう。」
「では、何を気にすることがある。」
彼は、足を止め再び振り返った。かと思うと、屈んで私と同じ目線くらいまで顔を下げ言った。
「お前は、人でもなければ生きている猫でもないだろう。しかも、まだ他人同然だ。普通、さんでもくんでもつけるだろ?」
「では、弥勒君・・・。」
「あ・・・。やっぱいいわ。御前にそう呼ばれると、なんか腹立つ。」
「・・・・・・・。」
何をしたいのだと、私は溜め息を突いた。また、歩き出す。が、もうそこは弥勒の家であった。
「じゃあな。ちゃんと成仏しろよ。」
「あぁ、そうなれるように努力はしよう。いつかまたな。」
そういって、私は夜の闇へ消えていったのだ。振り返ると、家の中に入るわけでもなく、私の背中を見つめる彼の姿がいつまでもそこにあった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw
つづく