帰らない黒猫 | 梟霊のブログ

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帰らない黒猫
(′・ω・)第一話、通りすがりの猫(その三)
 
 
 屋上にて、日向ぼっことでもしゃれ込む。本能としか言いようのない、この行動は止めようと思っていても無理な話だ。私は、昼休みと言う一時を小僧から離れ此処で過ごす。なぜなら、教室の中に響き渡る甲高い笑い声が、猫の良く聞こえてしまう耳には辛い。あぁ、昔の学校と言うものはもっと静かなはず、どうしてこうも様変わりしてしまったのだろう。っと、人間でもない私がそんなことを考えても、何も変わらないし始まるわけでもないな。そうやって葛藤し、無意味な時間をいっぱいに使って空を眺めた。
 時を知らせる鐘が鳴り、いくつかの部屋の生徒はぞろぞろと行進しはじめる。どうやら、別の部屋で授業とやらを受けるようだ。一方で、小僧の教室はと言うと、保健体育以外に移動するところなぞ見たことがない。その必要がない部屋なのだろうと、私は勝手に解釈していた。が、そもそも、進路とか言う目に見えない道の違いによって学ぶものが違うらしい。これは小僧の教諭に何度か付いて行った時、ちらりと耳にしてなるほどと納得したことだ。まぁ、なるほどといっても中身までは知らんがな。ともあれ、やつのいる教室に戻るとしようか。私は、ここにくるの時と同じく、壁の中をするすると降りていった。
 小僧の教室は、英語の授業であった。しかも、懐かしい髪と瞳の色の女もいて、音楽を聴いたり、何の意味があるのか解らない遊戯をしてみたりと、普段なら死人の行列のような雰囲気が、今はとても軽い。だが、それは逆を言えば昼休みと言うものと同じで、キンキンと頭に響くものだった。
「むふぅ・・・・・・。やかましい事極まれりか・・・・・・。」
思わず独り言をサラリと溢してしまった。不意に小僧を見ると、横目でこちらを見ていたが直ぐに別に視線を移した。おや、やはり見えているのか。と、私は考えたが、それ以後目が合うことはなく。気のせいなのだと、また、ふらふらと小僧を眺めた。
「・・・・・・。」(あぁ~、見てる見てるよ?すっげぇ見てる。思いっきり見てる。どうすっかなぁこの状況。)
「ヘイ!、ロク!!ユー音楽、大好キ本当デスカァ?」
「え?あ・・・・。イエス・・・・」
「オー、ドウシタヨ?元気ナイ」
「シェリー先生!!!」
「ワット?ミスター・・・・ソーリィ。名前ワスレマシタ」
「・・・・・・・・・。一宮佐助!ニックネームはサムです!!」
「オー、ソウデシタ。ミスターサム。ドウシマシタ?」
「ロク君は今、恋に悩んでいるのです!!!」
「はぁ!?」
「ワオ!!誰かラブシテルノデスカ?ミスターロク!」
「ノーノー!!サム!御前なに言ってんだよ!!」
「え~?授業受けてないがわりぃ~し!」
「恋ノナヤミナライツデモキクヨ、ロク!」
「だから違いますって、シェリー先生!からかわないでください・・・」
「ハハハ!ソーリィ!授業はちゃんと受けなきゃダメですよ?」
「はい・・・・。」(なんで普通に日本語できるのに、このときだけ片言になるんだよ!意味わかんねぇ!!それと後ろの猫!!存在自体、意味わかんねぇ!!)
 なんともいいがたい光景が、目の前に広がっている。私は正直のところ呆れてもいた。この懐かしい人種の女性とサムだか佐助だかわからない変態とにからかわれ、項垂れている小僧。まともに相手などせず、きっぱりといえばいいだろうに。遠慮なんてものをするから、相手を付け上がらせてしまうのだ。また、この不真面目な空気のどこが勉学をする場所といえるのか。理解できん。硬いことを言うようだが、これなら死人の行列のほうがいささか授業になっているではないか。半ば、八つ当たりである。
  
 放課後、小僧は決まって図書室と呼ばれる部屋に向かう。そこでいつも、眉間にしわを寄せ分厚い書物を開くのだ。何が書かれ、何が面白いのかは解らない。ただ、小僧の横顔は、授業のときより真剣で何かこう輝きを放っていた。
「おい猫!」
不意の出来事で、体が硬直した。まさか完璧なまでに隠れているこの私が見つかるはずがない。
「おい!黒スケ!いつまで、隠れているつもりだ?一番窓際の棚の二段目。居るんだろ?」
どうやら、本当に見えているようだ。私は、溜め息を一つ突くとフワリ物音を立てることもなく小僧の前へ姿を現した。一つ、にゃあという掛け声も付け足して。小僧の顔は、言わなくてもいいだろう。不機嫌の一言だ。一方の私は、普段と変わりない顔で小僧を見上げる。
「御前、一週間くらい前に道に飛び出してきた猫だろ!」
いささか面倒な輩である。むしろ、いいのだろうか。おそらく他人には見えていない。そして、私には気がついたようだが反対側入り口付近の棚影にいる女の子には気がついていないようだ。
「おい、いい加減付きまとうな。気持ち悪いんだよ。その開きっぱなしの目とか、壁を無視するところとか、掃除ロッカーの上に頭だけ出して蠢いていることとか!」
私は、あくまで猫を貫いている。話している内容は理解している。要するに、最初からバレたということと、付きまとわれることが嫌だということだ。だがそれは、見えてしまっている小僧が悪いし、あの時変な顔をしなければこんなところには、私だって居ない。キョトンとした顔で、じっと見上げ、その後も愚だ愚だと独り言を言う小僧を内心笑っていた。あぁ、そうだ。ついでに確かめてみるのも一興かも知れない。本来の目的を思い出した。今現在にいたる理由とも言える出来事だ。よって、私は・・・・。
「小僧・・・、私は通りすがりの猫である。何か文句があるのなら。蹴り飛ばすなり焼くなり何なりとすればいい。だが、それができればの話だがな。」
「な・・・・。」
小僧は、あのときよりさらに驚いたような顔を浮かべ、鯉のようにパクパクと口を動かしていた。やはりな、私の言葉が届いていたのだ。しかし、なんと言う顔だ。可笑しくて可笑しくて、久々に牙をむき出しにして笑った。
「クハッハッハッハッハッハッハッハ。面白いな小僧!だが、言葉を失っているようなところ悪いが、あまり私とは話さぬほうがいいと思うのだが?入り口の本棚の影を見てみろ。女の子が凄い顔で見ているぞ?」
小僧は、はっとしたようで直ぐに振り返り、私の言ったとおりの場所をじっと見つめた。女の子は、すみませんと言うと慌てて出て行ってしまった。
「このクソ猫!なんてことしやがる。」
顔を真っ赤にさせた小僧が、私に火の粉を振りかけた。
「クソ猫とは、あまりにもふがいない。せめて名前で呼んでほしいものだな。」
「知るかそんなもの!」
「おやおや・・・・。慌てるのもいいが人の話をちゃんと聞くものだぞ?」
「!!!」
さらに顔を真っ赤にする小僧を尻目に、私は優雅に立ち上がり天上を指差しながら自己の名を言い放った。
「私の名はスムール、かれこれうん百年旅をしている猫である。」
だが、このときは知らなかった。名を交換することが、今まで自由だったものを縛り付けてしまうなどとは。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw
つづく・・・