満月のような瞳【帰らない黒猫】 | 梟霊のブログ

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とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

満月のような瞳
 
 
 
 
 
傷ついた過去も
傷つける未来も
必要なことだと誰かが言う
傷を知らなければ
誰かの傷をいたわることができないからだ
 
幾久しく、この足を止めた
見渡す世界は
気がつかぬうちに様変わりしていた
馬が闊歩していた道は
滑らかで硬く
鉄くずが唸り声を上げている
とんびが我が物顔で旋回した空は
鉄の塊が
ゴウンゴウンと声を荒げてどこかへ去っている
あの日から
どれだけの月日が流れたのだろうと
足元を歩く蟻の列を眺めながら
ゆっくりと考えた
 
私が見えるものなど
この世にはいない
そして、私が猫であると知ったのは
旅に出てから
もっと後のことだ
着物というものに
へんちくな格好が混ざり合い
滑稽な風景が通り過ぎていく時代
我輩は猫だのなんだのという書物を拝見した
それに描かれた黒塗りが
どうも私のことを指しているらしい
どうりで、幾ら背伸びしても届かぬわけだと
あの時は耳をたたんで
感心したものだ
それから、猫という生き物であったと自覚した後
猫ではなくなったのだと胸を張った
姿かたちは変わらぬが
この小さな頭から生み出されるものは
もはや、人のそれとは比べ物にならぬだろう
なぜなら、百年足らずの年月では
もう私に追いつくことなど不可能なのだから・・・
 
大胆なことを言ったとしていても
路地裏の柵を飛び越えたり
深い草むらで虫と戯れたり
やっていることは猫とは変わらん
ただ、時折不思議なことが起こる
道を横切るとき
どうやら見えてしまうらしいのだ
そう頻繁にではないようだが
そんな時、人の顔は妙に歪んでいる
私は、何か変なことでもしたのだろうかと
頭を下げ
髭をぴんと伸ばし
慎重にしたからうえを
この満月のような瞳で見上げる
しかしながら、この愛らしいであろう行動も
どうにも通じていないらしく
がっくりと肩を落とし
背を向けて去っていくのだ
驚かされるというか
悲しくなるというか
なんとも裁縫糸に絡まれたような不愉快さだ
思わずため息が出てしまう瞬間である
 
私が過ごす一日という時間
冷たい、熱い
そんなものは当に感じてはいない
そうだな、こころがそう思っているのだろう
あのカリカリと音を立てて
必死に扉向こうを目指したときの
息苦しさなんて
今では懐かしいものさ
そういえば
あの子は、どうなったであろうな
現在という時間では居ないであろうことは理解しているが
一応は恩人である
さて、懐かしくなってきた・・・
今一度、あの場所へ行ってみるとしようか・・・
もしかしたら、待っているかもしれないな
この不届きな猫を・・・
 
 
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw
帰らない黒猫
GW特別編ですw