ガラクタの人形
僕は、いつから此処に存在し
空を・・・
見上げてきたのだろう
温かい体に脈打つ鼓動
出来上がった形を
鏡というもので始めてめて見た
けれども
その中の僕は
未だ、曖昧な感情で揺れ動き
定まってはいない
もしも、これを人形に例えるのなら
あらゆる部品が材料が
そこらじゅうに散らばっている
そうとしか言えないだろう
年月と大人と自然が
僕の心を組み立てていく
時に叱り
時に慰め
時に笑い
光と影の描写を
書き留めて
カチリ、カチリと当てはめられていく
ただそれを、どれだけ美しくしようとしたのかは解らない
僕はその途中で
壊れてしまった・・・
放り出されたまま
白黒の世界を彷徨い
歪な形のまま
動き出した
僕は、いつから此処に存在し
空を・・・
見上げてきたのだろう
僕は、いつから此処に存在し
空を・・・
見上げてきたのだろう
鏡で覗き込む僕自身と
その奥に立つ
僕自身が噛み合わず
心が体を傷つけていく
心が周囲を傷つけていく
何も知らぬまま
いや・・・
考えもしないうちに
動けば動くほど
さかさまに落ちていく
気を使ったつもりでも
要らないことと罵られ
蹴り飛ばされた・・・
僕は、僕を呪った
どうせなら
綿や木で作ってほしかった
だって、もしそうだったなら
もう、壊れて燃やされていたはずなのに・・・
なぜ鋼鉄の体で出来上がってしまったのだろう
こんなガラクタの人形になるくらいなら・・・
生まれてなんて
来なければ良かった・・・
いつの間にか
水滴が体を一つ二つと流れ
そのまま見上げた空は
幾ら蒼く透通っていようとも灰色だった
僕は、いつから此処に存在し
空を・・・
見上げてきたのだろう
僕は、いつから存在し
この灰色の空で
諦めていたのだろう・・・
誰もいない部屋の隅で
口を空けた別世界を眺めていた
色とりどりの世界を眺めていた
この場所にいながらにして
どこまでも遠く果てまで旅をした
背中に闇を背負いながら
その中で知った
僕一人が特別に壊れていたわけではないと
その中で知った
ありのままを見つめ
前を歩いている人がいると
驚いた
見下した
否定した
それでも
目を逸らすことができず
一言・・・
足跡のように残した
それが始まりとも知らずに・・・
朝日が何かを払い去る
今まで見上げたことも
眺めようともしなかった
一瞬の時間が
なぜか無性に美しく思えて
僕の瞳は
あの蒼く輝く空を映していた
冷め切った全てが
照らされ
灯され
何かが宿った気がした
あの轟々と燃える太陽のように
何もできないのは相変わらず
意図しない出来事で
罵られることも相変わらず
ただ違うこと
鋼鉄の体で良かったと思えるようになったこと
そして
反省すべきこと
その体を過大評価しない、こと・・・
ガラクタ人形に光が灯されてから
過ぎ行く時間は
光よりも早いかもしれない
見つめる世界が美しく
その色合いが僕を染め上げる
その高揚感は
逆に他人を見えなくする
僕は、また間違いを犯し
叩きつけられた
けれども
僕は、笑って立ち上がる
反省していないのではない
間違いを知って嬉しく思えるからだ
いつからだろうな
前に進むことが
こんなにも楽しいと思えるのは
歪な形のまま
駆けている姿は
道化よりも滑稽で
未知な者よりも不可解なことだろう
ただ、今のこの手だけは
いつの間にか丸みを帯びて
誰かを掴んでも
傷つけることはない
それだけでも
救いだと思えた
でも、それに気がついたとき
僕は無力であることを
悔やんでいた
この空が空っぽであると知ったときのように
なにもないこの手が
重かった・・・
僕は、いつから此処に存在し
空を・・・
見上げてきたのだろう
僕は、いつからこの手を広げ
君へできることを
考えていたのだろう
僕は・・・
いつから
ガラクタの人形であることに
誇りを持つように
なったのだろう・・・
by幻想師キケロw