沈黙の鐘 | 梟霊のブログ

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とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

沈黙の鐘
 
 
 
 
 
 
どこまでも
いつまでも
あの頃に鳴り響いた鐘の音を
私は覚えている
ただそれが
あまりにも長い年月を経て
祝福に満ちたものだったのか
絶望に沈んだものだったのか
覚えてはいない
あの時の涙の感触だけが
この両の頬に一閃
ぬくもりをもって、残っているだけだ
 
草原の焼けた匂いが
やけに甘い香りがする
小春日和の小道
幼い私の瞳に移るのは
キラキラとした暖かな世界
触れるもの
追いかけるもの
耳を澄まして聞くもの
その全てが硝子の小玉(ビーダマ)のように
美しく
そしてまた、曖昧な光の加減が
眩しい
遠くに母が見える
あの頃の私は
まだ、息を切らせて
その胸の内に飛び込む
純粋さを失ってはいなかった
 
どこからか聞こえる
悲しみの警告音
空を埋め尽くした
黒い大きな鳥
羽ばたくこともせず
表情も変わらない
過ぎ去りし声に
残されるものは
白と黒の荒野
失った現実と
焼きついた理想が
私の心の境界を溶かし
在りもしない道を引きずり出した
この細った足は
その道をふらふらと進むことしかできない
誰かが行く手を阻んだとしても
自分ではどうすることもできず
そこに飛び込んでいった
声にならない悲しみと
想いにならない怒りを
あー、あー、という単調な声に乗せて
 
世界の全てがモノクロ写真
食べるものの味も解らず
残された大きな手の温もりも判らず
闇雲に、時間にかぶりつき
必死に何かから逃げ惑う
焼け焦げた皮膚の瘡蓋が
ひび割れるたびに
現実に引きずり込まれ
涙を溢さずにはいられなかった
 
沈黙、沈黙、沈黙
虫の声、鳥達の詩
風の囁き
何もかも黙り込んだ夜の大地
所々に浮かぶ
灯火
まるで夜空が落ちてきたようだと
笑って言った君がいる
すさんだ瞳で
私は見上げ
力ない拳で
君の頬を殴った
けれどもその笑みが消えることは無く
心のそこへ
あの朝日のように届いていた
 
世界に色が戻ったのはいつの頃だろう
優しい母の記憶を思い出せたのは
いつの頃だろう
幸せと思えたのはいつ以来だろう
地平線の向こうを
君と二人
手を繋いで見つめていた
気がついた頃には
一緒に居ることが当たり前で
それがどこか不自然に思えてならなかった
 
碧の若芽が
絶望の灰を押しのけて
手を広げていた
大人と呼ばれるようになった
私たちは
あの光景を思い出そうとはしなくなり
口にすることも無かった
互いが互いを知っているからこそ
蓋を閉じたままにしようと
約束したのだ
愛と呼ばれる絆に結ばれた
その時に
君が先に逝き
私は、また一人
にぎやかな町並みを望む
けれども
どこからか聞こえた鐘の音が
酷く昔の記憶を呼び起こした
はて、あの頃か、あの時か
幾ら考え込んでも
思い出せない
押し寄せるものは全て
無残に転がっているものばかり
あぁ、なんともどかしい
大切なとても大切ななにか・・・
空っぽの箱の中を彷徨っているうちに
鐘の音は走り去る
暗い空気だけが肩に圧し掛かり
私は、不貞腐れながら寝床についた
 
どこまでも
いつまでも
あの頃に鳴り響いた鐘の音を
私は覚えている
ただそれが
あまりにも長い年月を経て
祝福に満ちたものだったのか
絶望に沈んだものだったのか
覚えてはいない
あの時の涙の感触だけが
この両の頬に一閃
ぬくもりをもって、残っているだけだ
あれは幻聴だったのだろうか
あれは幻だったのだろうか
極限の状態に見た夢の欠片なのだろうか
わからない
ただ、今それを鳴らそうと努力しようとも
おそらく
この空へ鳴り響くことはないだろう
ゆらゆらと揺れるだけで
沈黙を保ち
幻の音を
どこかへ贈り続けているのだ・・・
 
 
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw