沈黙の城
遠い記憶
私が居たような世界
夢の中で
還る・・・
吐き出す息は白く
青みがかった灰色の部屋は
やけに
焦げた臭いがした
物音といえば
私が蠢く音以外に
あるものか・・・
しっかりとした窓から
外を覗きこみ
自分の置かれた状況把握に
全ての神経を
使った
取っ手の壊れた扉を開けた
ぎぃともきぃとも言わず
砂と何かが擦れた様な
不快な音を
どこまでも伸ばし
いつまでも走らせる
恐る恐る廊下に片足を突き出して
意を決して
出てみるものの
馬鹿らしいくらい静かで
不気味なほどに
冷たかった・・・
私の意志は上を目指せといっているが
今のところ
どっちに行けば上に出るのかは不明だ
唯一つ
わかっていることといえば
この魂が
覚えている
ということだけ・・・
人は、度の越えた恐怖の中に
立たされると
幻聴幻覚そのたもろもろに
異常をきたすというが
人智を超えた世界の中では
静けさの中でも
起きてしまうらしい
気がつけば
どこへなりともふらふらと
私の意志とは関係なく
生のあったころの映像が
残像として
すり抜けて行く
誰が誰で
ここがどこで
どうなったのか
今の私には関係の無いことだが
魂の持ち主には
とても重要なようで
瞳に
熱い何かを溢れさせる
階段を上っては立ち止まり
溢れ出す
知らない部屋に入っては
溢れ出すを繰り返し
私の瞳は
若干疲れてしまった
だがそれも
渡り廊下のようなところに来ると
やけに進むことを躊躇っている
なんとなく・・・
胸に一閃
痛みのような感覚が・・・
何かが
この身に
この時代
この世界で
起こったのだろうとは
察しが着いた
しかし
それ以上は
解らない・・・
屋上に出ると
灰色の城であると理解した
それも
ちょっとやそっとのものではなく
巨大な・・・
全てを見て回るには
数日・・・いや、数ヶ月かかるであろう
いやいや、失礼
数ヶ月は言い過ぎたが
それだけの大きさなのだ
そして
見渡せば
中央に
ぼろぼろに錆びた
剣・・・のようなものが
見覚えのある
白い骨格を貫いて
刺さっている
それが私だと
理解するのに
時間は必要なかった・・・・
なぜなら其処に
瓜二つの幻影が折り重なるように横たわり
ちらちらと
こちらを見ているのだから・・・
誰もいない城
沈黙の城
主無く佇む城
そこに今
私と過去が見つめ合う
話すことは何も無い
交わすものも何も無い
あることといえば
互いが互いに
その状況を飲み込んでいないということだろう
それが
一つの言葉となって吐き出され
固まった空気に
風穴を開ける
御前は誰だ・・・、と
私は、私のようなものに向かって
私のようなものは、私に向かって
誰だという
実に滑稽で
実に不気味な現象だ
ただし、言葉というものを
掛け合ったのはこれっきり
私は目覚め
私のようなものは
追憶の果てに目を何処かへ向けて眺めていた・・・
by幻想師キケロw