帰らない黒猫【Ⅱ】 | 梟霊のブログ

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適当に詩をUPします。
評価に、興味なし
フクロウ大好き
きのこ大好き
山菜大好き
ハーブ大好き
とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

暫く
人の子と
彼は行動を共にしました
晴れの日は
一人と一匹は鼻歌を歌い
雨の日は
一人と一匹は寄り添い
お腹がすけば
一匹が、どこからかパンを運び
一人はどこからか、一掬いのお乳を持ってきました
互いが互いに助け合い
いつしか人の子は
苦しくても
寂しくても
笑顔を出せるほどになりました
彼は、想いました
そろそろ・・・かな、と
 
秋風が身にしみる頃
彼と人の子は
何処かの名も知らぬ町の中にいました
何故、町にいるかというと
彼が、パンを盗む名手として有名になりすぎた事が
原因でした
罠とも知らず無防備に道に投げられていたパンを
運んだことが行けなかったのです
しかし・・・
そのころの彼には
普段の警戒心などまったく無く
日々痩せていく人の子を助けようと
必死だったのです
人々が、彼を追回し
ようやく追い詰めた先で
動くこともままならない子供が一人
それはそれは、猫より人々が驚いていたことでしょう
人々は、彼がしてきたことは許されないけれども
彼のやっていることは正しいことだと口々にいいました
人の子の前で、身体を膨らませて必死に守ろうとする姿を見ながら
彼と人の子は
馬車に乗せられ
この町に連れて来られました
人の子は、医者のところへ
彼は、普段盗みを働いたパン屋のところへ身を置いたのです
さぁさぁ、可愛い盗人君、働く時間だよ?
店の前に座っておくれ
じゃなきゃ部屋中毛だらけになっちまうよ
秋の風がキンと身にしみる朝
その町での彼の仕事が始まったのでした
 
年が明ける頃
人の子もパン屋のところへ身を置いていました
可愛い洋服に身を包み
あのぼさぼさだった髪の毛を
すらりと伸ばし
まるで別人のような姿で
彼の傍らにいます
もうすっかり、この町で知らぬものがいないほどに
人の子は、美しい少女となったのです
さらに二年の月日が流れ
少女もますます美しくなりました
彼も、若干大きくなりました
この頃になると
少女は
あぁ、御前が人の子であったなら
恋に悩むことなど無かったのに、とか
御前はいつまでも一緒にいてくれるよな、とか
不思議な瞳で眺め
語りかけてくることが多くなりました
しかし、彼には此処に留まる気など
まったくありません
幾先が、安心できるまで傍らに寄り添って見ていただけ
彼の中には、他にも沢山の人に
この優しさも
このぬくもりも
届けたいという思いだけが渦巻き
少女のそんな想いなど
どうでもよかったのです
そして、ある春の風の強い日の朝のこと
昨晩、一緒に入ったはずの黒猫の姿は無く
笑顔を取り戻したはずの人の子は
あのときとなんら変わらない
大粒の涙を溢し
擦れた声で言いました
どうして?
御前だけは一緒にいてくれると思ったのに
御前だけは、私の傍で優しく温めてくれると思ったのに
あの時の優しさも
あの時の温もりも
ただの御前の気まぐれったのか・・・?
許さない・・・
また、私を一人ぼっちにしたこと
許さない・・・
私を弄んだな?
許さない
許さない
そして、あの絶望よりももっと暗い感情に
顔もこころも歪めたのでした
一方で
彼はそんな事になっているとは思わずに
自分の役割を果たしたと
意気揚々と駆けていました
 
数年後
再び訪れた
とある村で見た光景
生きる希望を見出して
光にも勝る笑顔を手に入れた
あの時の子供が
今度は
数人の手下を従えて
別の誰かの大切な物を奪っていたのです
見間違えるはずはありません
確かにあの少女です
その子は、彼を見つけるなり
笑顔で駆け寄ってきて
抱き上げました
帰ってきてくれたのかい?
お腹すかせてるでしょう
まってて
直ぐに美味しいもの用意してあげるから
見たことの無い家に連れ込まれ
そして
この町にいる全ての人々より
豪華で
きらびやかで
何より・・・
贅沢な食事を
彼女は、もてなしたのでした
彼は戸惑います
どうして、人々の憎しみが突き刺さる
どうして、人々の恨みがこみ上げる
この料理一つ一つから
どうして、悲鳴が聞こえるのか
そして、どうしてそれを
あの子が美味しそうに平らげていけるのかと・・・
口にしよう
頭を下げてみるたびに
体が硬直し動きません
何度も何度も
何度も何度も
あの子の好意を受け取ろうと
頑張りました
けれども、それが出来ないのです
ついには
その子を、怒らせてしまい
身体をぼろぼろになるまで蹴り上げられ
外に放り出されてしまいました
あぁ、僕はどこで道を間違えたのだろう
あぁ、僕はどこであの子を変えてしまったのだろう
いくら考えても
その答えも理由も判りませんでした
普段は気持ちよく眺める夜空が
とても寂しく感じられ
そして何より
こころが深く深く傷ついてしまったのです
初めて声が出ない涙を流しました
初めて信じたものに裏切られました
薄れいく意識の中で聞こえたのは
あの子に宿る
暗く歪んだ思いばかり
信じていたのに
御前も所詮、私を馬鹿にするために優しくしたのだろう
御前も所詮、私を哀れんで傍に引っ付いただけなのだろう
それをひたすら吐きかけては
砂をかぶせてくるだけ・・・
あぁ・・・寒い
どうしてこんなに寒いのだろう
あぁ・・・寒い
どうしてこんなに寂しいのだろう・・・
 
気がつけば霧の中を一人歩いていました
どこなのでしょう
どこなのでしょう・・・
どこなのでしょう・・・
 
昔々
人々の中を
帰らない黒猫が過ぎ去っていきました
かろうじて一命を取り留めたとき
彼は、暖炉の前で寝そべっていました
懐かしい温かさ
懐かしい樹の温もり
煙の匂い
目の前に首をかしげた
小さな女の子
よくよく見れば、両の目が閉じられています
不意に、あの激しい記憶が蘇りました
そう
恐怖です
いつの間にか彼には
恐怖というものが取り憑き
逃げるべきと本能が叫ぶようになっていました
慌てて立ち上がる
と、同時に走る激痛
思わず叫び声を上げ
女の子が目覚めてしまいました
震えだすこころと身体
止まらぬ残影
つめを床にたて必死になって離れようとします
ですが目覚めたその手が
しっかりと身体を押さえつけ
元の場所に戻してしまいます
その姿には
あの頃の勇敢な面影など
どこにもありませんでした
どこにでもいる
野良猫
不信をあらわにした目を持ち
例えそれが悪意無き手であったとしても
噛み付いてしまう牙を備える
ただの猫
それは傷が癒えても、なお、変わることは無く
温もりや優しさを受け入れることも無くなっていました
毛並みは
冷たさを帯びて青白くひかり
瞳は悲しみで黒く染まりました
爪は、相手に傷を負わせるために鋭く尖り
笛のように透通った声は
荒々しく鋭い刃物のようになりました
部屋の片隅に蹲り
餌として出される食事も
まともに口にすることもなく
ただ、逃げることだけを考えました
一年
二年
三年
月日を重ねても
やはり、考えていました
女の子が少女へと変わり
共に布団の中にいても
彼はじっと見つめました
きっと、本性を現すに違いないと
思っていたからです
四年
五年
六年
七年
時間だけは無常に流れます
やがて
少女が女性として
羽ばたくとき
彼はもう、遠くへいけるほどの体力も無く
寝る時間が多くなっていきました
 
ある日のこと・・・
彼は気がつきます
扉がうっすらと開いていることに
外の音がはっきりと聞こえることに
ようやく
逃げ出せる
あの恐怖から
あの痛みから
よろよろと
よたよたと
おぼつかない足が
外を目指します
よたよたと
よろよろと
ままならないつめの音が
部屋中に響きます
鼻から抜ける空気の音が
やけに乾き
すかすかと響きます
でも、もう直ぐです
もう直ぐです
もう直ぐです・・・
もう直ぐです
もう直ぐです・・・
もう、直ぐ、です・・・
目の前が白く天を向き
暗い大地へ落ちました
女性がただいまと声をかける頃
黒猫は
ただただ、のんびりと眠っているかのような姿で
世界の外へと
旅立っていました
そして、もう二度と帰ってくることはありませんでした
では、彼はどこへ行ったのでしょう
それは
他でもない
あの笑顔の中へ帰っていきました
彷徨うことも無く
真直ぐに目指したのです
あの太陽の下で笑いあった
世界の真ん中へ
もう一度、やり直すために
そう、彼は諦めていなかったのです
誰かへ
幸せと
優しさを届けることを・・・
 
昔々
人々の中を
帰らない黒猫が過ぎ去っていきました
身体に宿るぬくもりとは裏腹に
氷のような瞳をもって
縫うように駆け抜けます
傷つき泣いている子供には
温かな舌で二、三度舐めてやりました
うつむき泣いている子供には
その顔を見上げ
精一杯笑って鳴きました
怒り、恨み、絶望する子供には
そっと傍らで見守っていました
彼らが立ち直る頃には
その場に黒猫の姿はありません
二度と見ることもありません
彼らに残るのは
不思議な記憶と確かな温かさだけ
いつしか
彼らは
その猫のことを
帰らない黒猫と呼んでいました
そして
伝説として
伝えていったそうです
 
【もし君が、暗く冷たい世界から目覚め
走り去っていく
尻尾をピンと立てた黒い猫を見たのなら
とても運がいい
彼の別れ際を、見ることができたのだから・・・】
 
とね・・・
 
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw
 
いかがでしたでしょうか・・・
一応は、必死に描いてみました
去年のプロトタイプをより具体的に描いたつもりですが
何より
才能というものが欠けているため
内容が安定しません・・・
私的には、何か物足りなさを
改めて感じますが・・・
読んでくださった皆様はどうだったでしょうか・・・
少し不安ですが楽しんでくれたなら幸いです。