儚望(むぼう) | 梟霊のブログ

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とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

儚望(むぼう)
 
 
 
なんの変化も無い日常に
感謝する人はどれ位いるのだろう
変わらない友へ
安堵する人はどれ位存在するのだろう
僕はふと
自分の両手を広げ
考えていた・・・
 
もう秋の終わり
冬の足音が
こつこつと聞こえ
小さな氷の子供たちは
僕の頭に
どちらが早く落ちるのか
競争をしているようだ
ほほを紅く染め
薄い合羽を隔てて
中は火のように熱い
僕は、ひたすら仕事
周囲は、霧で覆われ
寂しげになった山桜シルエットが
残りの葉をゆっくりと名残惜しそうに散らせている
乾いた金属音だけが
狼の遠吠えのように
遠くまで駆けて行き
僕らの吐息は
大地へ落ちて行く
 
普段なら気にも留めない
枯れ草の囁く音が
時に不気味に聞こえることがある
普段なら可愛げのある
落ち葉の波が
時に不気味に蠢くなにかに見えることがある
きっとそれも
その類だったのではないのだろうか・・・
幽霊でもない
精霊でも
ましてや
神様と呼べるようなものでもない
ただの黒揚羽
霧に隠されることも無く
ふらふらとこちらへ飛んできた
思わず声を上げたが
そのときにはもう
僕は僕自身を見失っていた
不思議そうに周囲を飛び回るそれは
僕の不可解な瞳に写りこむ
やがて
肩にとまると
僕の目線はどこかの誰かに置き換わった
まるでそう
川下りの、目の前を滑らかに通り過ぎて行く
風景のように
その人の時間を
見ることができた
息を呑むことしか出来ず
言葉すら浮かんでこなかった
じんわりと服を突き抜けた水分が
一気に冷やされ
背中や腕
さまざまな部分を抓り出す
小休止
とたんに震えが全身を包み込み
じっとしていられなかった
ただ、そのことが
ありがたいことに
僕を元の世界へ連れ戻してくれたのだと思う
 
世の中には不思議というものがある
だが、その不思議も理屈がわかっていたのなら
ただの現象に過ぎない
では
僕が見た誰かの記憶は何だったのだろうか
説明はしてほしいと思うが
多分、だれがなんと言応と納得はしないだろう
だからそう
仮説の答えを
ちゃっかりと逃げ道を作るかのように
置いておく
そうでもしなきゃ
僕がそれになってしまうから・・・
 
誰かの想いなんだと思う
最後の瞬間がさ・・・
悲しくて
今も胸が苦しい
締め付けるような言葉の数々
諦めるかのような心の綻び
その人が死にたいと願うことと裏腹に
伝わってくるものは生きたいという鼓動
ただ、結局。
黒揚羽になって彷徨っていたんだ
その人の変わりに・・・
多分、あの様子だと
いろんな人に止まってみたんだ
でもうまく伝え切れなくて
探して
探して
探して
此処まで来た
【本当は生きたかったんだよ?】
それだけを伝えるためだけに
普段なら考えないこと
それが儚い望みのように聞こえてくる
【なぁ、あんたは僕のどんな言葉がほしかったんだい?】
僕は、何もない深い霧へ
こころのなかで問いかけた・・・
返ってくることは無く
そこには静寂だけがゴロゴロと行ったり来たりを繰り返していた
 
合羽一枚を隔てて
僕の身体は火のように熱い
白昼夢の中を彷徨った一瞬
その出来事が在っても
その後に変わるということは、無い
今も、これからも
そして
気がつけば
霧は何処かへ去り
若干、朱色に染まりかけた空が
目の前に広がっていた
そう・・・
どこかで燃え尽きた火を庇(かば)うかのように
 
 
 
 
 
by幻想師キケロw