無名英雄詩
私は彼の矛先を知る
私は彼が涙する意味を知る
私が、どれほどまでに叫んでも
決して届くはずもない戦場にいるはずなのに
笑顔で振り向いた
それはとてもとても優しい顔で
その姿が塵となる瞬間まで
途切れることなく
笑っていたんだ
今は、何もない
何も書かれていない
存在した証拠も何一つ残されていない
あるとすれば
私が、覚えているということだけ
そう
私だけが・・・
私は彼の偉大さを知る
私は彼の弱さも強さも知る
私が、いくらかけ上がろうとも追いつけない戦場で
たった一つの命のために飛び込んでいく背中を
確かに見た
普段は小さく見える彼は
その時ほど大きく見えたことはない
きっと生きていたならば
私の傍らで
弱々しい躰を伸ばして
苦笑いとも見える笑みをこぼしていただろう
だが、今は
何もない
何も記されていない
存在した証拠も何一つ残されていない
在るとすれば
そう・・・
その命が
私のそばで眠っている位だろう・・・
君は英雄だ
誰しもが尻込みする戦場で
ただ一人駆け出した英雄だ
君の所業を
いかなる人にやれと
やってみろと
いったところで
胸を張って銃弾の中を泳いでいけるものなど
どれほどいることだろう
今は、君のことを愚者と罵るものがいるだろう
今は、君のことを馬鹿と叫ぶものがいるだろう
だが、私は知っている
君は紛れもない英雄であることを
by死神キケロw