鋭きは己ためだけに
友よ・・・
ただ、淡々と
ただ、単々と
己に向き合うことの
難きことを知るとは
真(まこと)、初心にて
刀を持つに等しく
振り回すだけで、なまくら
愚行である
定めを知ること
運命(さだめ)を理解すること
今にも溢れ返えらんとする水盆に
静かに水滴を垂らし続けるが如く
得難き真理
僅かでも
揺らぐことあらば
たちまち、それまでの努力は無と帰す
また、一から始めねばならぬ
また、一から問い続けねばならぬ
己とは?
自己とは?
生を受け、死ぬまでの間
絶え間なく
虚空なる部屋の真ん中に
座し
見つめ続けねばならぬ
未来永劫
進むべき道を歩み続ける
その行為
安易に眺むれば
己の足元を、細く、脆く、危うくし
また
身を守る術(すべ)を持たざれば
競り合いに敗北し
攻ずる術を持たざれば
凌ぎ合いに勝利することもなし
丸腰で進むこと
太平の世なれど
無謀なり
幼少より
厳しく有れ
幼少より
耐え忍ぶことを知れ
誰よりも
鋭き賢を持ち
誰よりも
鋭き眼(まなこ)を持ち
誰よりも
鋭き躰を持ち
されど
その鋭さに振り回されることなく
堅牢なる精神と強靭なる魂を兼ね備え
感情は、止水の如く
されど意思は、かの炎より高く
燃え上がらせよ
ただし、
自らに、満ち足りること無きように
常に、空にし備えること
善し
その御身には
如何なる鎧を着込むものか
その御身には
如何なる武具を持ち得るものか
もう一人へ問いただしてみよ
そは、己の影なれば
始終交わらなければならぬ敵である
常に、平伏さなければならぬ敵である
単(ひとえ)にいうなれば人の業と欲であろうか
すなわち、影に勝ち続けることとは
人の理を持ち続けることに等しいこと
故に、鎧と武具を選ぶとは
人生をどう生きるかという境地にまで
行きつくものである
持つべきは、より鋭き刃なり
友でも、愛しいものでもなく
己が手に在り
己に負けぬ劔(つるぎ)である
無関係とは世に存ぜぬ言葉であり
凡(あら)ゆる事象
武具、鎧となりうる鉄片である
掻き集め
寄せ集め
自らが描いた炎により熱し
自らが築いた魂により鍛え
自らが創り上げた精神により研ぎ澄まし
誇れ
胸を張れ
前に出ろ
大地を踏みつけて
敵を貫き、振り払え
勝ち続けろ
誰のためでもなく
ただ、己のためだけに
鋭きは己のためだけに
鋭きは己のためだけに
己の刃を
他者に見せつけること
傲慢の一言である
己の刃の製法を
他者に教え、広めんとすること
愚行の一言である
御身の刃は
ただの飾りか
御身の刃は
易易とした玩具か
そうではなかろう
恥を知り
傷つけることなきように
鞘に納め
背を改め
世に座すための物であろう
御身、鋭きは己のためだけに在れ
他者に切りかかり
勝ち誇ること無かれ
友よ・・・
今は、辛かろう
友よ・・・
今は、寒かろう
だがしかし
楽な道を選べば
末は、先無き崖の上
なればこそ
苦しくとも、かの山を登り続け
頂きに至ったのなら
見下ろせばよかろう
気が済むまで
勝どきを掲(あ)げ
あとは、降るのみとしよう
降りを見据えれば
自(おの)ずと笑(えみ)は溢れよう
さすれば
それまでの全てが馬鹿らしく
嫌々しく思え
自ずと、生きる道を選ぶだろう
友よ・・・
逝くな
友よ・・
逝くな
今、今宵も
かの地、如何なる所とも
共にあり
歩き続けようぞ―
by四丹守 斬気露w