見つめないで・・・
僕の背中を
服の端っこをつまみながら
付いて歩く
もし、いま振り向いたなら
君は、どんな顔をしているのだろう・・・
うつむいてばかりの日々から
僕が抜け出せたのは
君に出会うずっと前
それから、眺める世界は
雨ばかりの空から
晴れ渡る青空へと変わった
すごいと思った
目の前だけじゃなく
心までも
遠い果ての果てまで
澄み渡り
今までの暗い絶望が
嘘のように
自由に羽ばたいていた
見たことのない
鮮やかな姿で・・・
僕は、この素晴らしさを
誰かに伝えたいと思った
でも、そこに転がる無数の僕の死骸が
一斉に噛み付いて
置いていかないでと、すがりついた
そして気がついた
伝えるべき言葉がないことに
空っぽのココロに
だから、僕は誰かに伝えるために
この感動という想いを教えるために
探すことから始めたんだ
世界からも
自分自身からも
無限に広がる宇宙のような広大な空間
その中にあるはずの
僕だけの宝石を見つけるために
君を見つけたのは
抜け出してからずっと後
僕のように、蹲り
僕のように空を睨みつけていた
そして、一粒、一粒
僕が流せなかった
綺麗な涙を流していた
気になった
その裏腹の涙
躰と心が別々のように思えた
泣き顔
ある時は公園で
ある時は細い路地裏で
幾度となく泣いて
何かに必死に耐えていた
重なったわけじゃない
同情したわけじゃない
だた自然と
大丈夫かと言えたから
【それじゃあ、僕自身の自己満足?、罪滅ぼし?】
未だ離れない、僕の死骸の一人が
不敵な笑みを浮かべながら
問いかける
【わからない・・・】
でも、言わずには居られなかった
僕は、自分の力で抜け出せたけど
この子はきっと、壊れまいと必死で
自分を縛っているんだ
だから、逆、なんだと思う
【逆?】
同じじゃないか・・・
あの時のお前と
世界を呪ったお前と
同じじゃないか・・・
【違う!】
僕は、壊れた開き直った
結局の所
自分からも世界からも一時的に
逃げたに過ぎない
でも、この子は・・・
壊れそうなのに必死でそれを守ってる
【フ・・・・ハッハッハハハ、臆病なだけだろ?壊れるのが怖いだけ。いっそ壊れてしまえば。】
今のお前のように
何事にでも平気で笑えるようになるだろうに
勿体ない・・・
さぁ、声を掛けたんだ
この先は、どうするんだ?
傷の舐め合いか?
それとも、切りつけて突き放すのか?
どっちにしろ
こいつはもうだめだ諦めな!
遠くから見てみな
きっと逝くぜ?
誰かの名前をなんども叫びながらな!
【・・・、お前も僕自身なら解るだろ。もう、お前が必死になって噛み付いていないと】
僕に振り落とされ置いて行かれることぐらい
僕が、僕自身を哀れみ
お前を置いてやってることぐらい
なぜ置いておくか
知っているか?
【・・・・。あぁ・・・。】
僕の背中を
服の端っこをつまみながら
付いて歩く
もし、いま振り向いたなら
君は、どんな顔をしているのだろう・・・
怒っているのだろうか
泣いているのだろうか
それとも・・・
それとも、希望を見つけたように
見上げているのだろうか
宛もなく、僕は歩いた
彼女も、黙って付いて歩いた
気が付けば町外れの空き地
自問自答を繰り返し
その先に訪れた空き地
はっとして、思わず謝った
振り向いたそこにいたのは
抜け殻のように暗く沈み
人形のように固まった表情
言葉が出てこなかった
きっと、あの時の僕はこの子と同じか
それ以上に、こんな顔をしていたに違いないから
【見ないで・・・】
そんな哀れんだ目で
私を見つめないで・・・
【え?】
背筋が氷そうな目線
そこからこぼれ落ちる
助けを求める無言の叫び
僕は、とんと頭に手を置いて
くしゃくしゃになるまで撫でた
そのあとで
言ったんだ
【君も・・・】
そんな怖い目で
僕を見るな
というより
見つめないでくれ
その、引っ張り回したのは正直謝る
だけど、あのままだったら
空に還ってしまう気がしたから
【うん・・・】
【だろうな・・・】
大丈夫
君は、僕と違って強い
必死になって自分自身を守っている
だから、笑いな
思いっきり笑いな
何もかも忘れるくらい
大声で笑いな
守れるくらい君は強いんだから
その強さを、周囲に見せつけるんだよ
そうすればきっと
世界は変わる!
【どうして、そう言い切れるの?】
【さぁ・・・】
でも、いまワクワクしただろ?
少し、あったまっただろ?
心がさ
さぁさぁ、泣くのは後にしよう
そんな顔で空を見つめても
そっぽ向かれるだけだぞ
笑顔で
空を眺めてみな!
変わるって意味が解るからさ
君はその・・・
うつむいているには勿体ないくらい
綺麗なんだからな!
【なにそれ?】
誰もいない空間に
少女の笑い声が響いた
そこに
何かに安堵した僕が居るというのに
羽のように軽やかになった声を響かせて
楽しそうに
本当に嬉しそうに笑う
君がいる
【ありがとう。助かったよ。】
そう言い残して、走り去ったあと
僕は、僕自身の死骸へ
そんな目で見るな
僕自身も、失敗したんだと思っているんだから
と
ひとり寂しく笑った・・・
by無限のキケロ