表は黒き鎧でも、心まで黒とは限らぬものよ
天空に聳え立つ
私を見上げる一人の少年は言った
僕は、何もアナタを信じているわけではない
分厚い本を信じているわけでもない
誰かが口にした神様の言葉さえ
信じていない
信じているのはただ一つ
この心に宿る
唯一の神
僕だけの神様だけだよ
私は、見下ろしているだけに過ぎない
なぜ、彼がそう私に告げたのか
その真意は定かではない
ただ、そう言った彼の身には
真っ黒な煙が立ちこめ
差ほどの人とは言えるものではなかった
私は只其処に聳え立つ柱のようなもの
見守るもの
監視するもの
だが、私を見つけた少年が
あの日から気になり
観察している
真っ黒な煙は
時を追うごとに分厚く光沢を帯び
包んでいく
悲しい顔をすればするほど
憎悪に満ちた顔をすればするほど
鋭い何かを付け加えながら
がっしりと覆う
私はその煙の正体を知っている
虚実だ
彼が悲しい顔をするときは、大切な何かの目の前で
彼が憎悪するときは、矛盾した何かを目の前に置いたとき
守るために躊躇わず口にするもの
そう、嘘なのだ
彼が大人になる頃
それは鎧となり
厳しく激しい流れの中でも
耐えきるだけの硬さを誇っていた
顔は、人により仮面を付け替えて
ころころと変わり
あの頃のように私を見上げることもなく
生きているだけの人となっていた
だが、ある日ボソリと言う
この世界は美しく、儚く、汚いもので出来ているのだなと
私欲に埋もれているわけでもなく
憎しみに囚われているわけでもなく
憤怒に蝕まれているわけでもない
鎧の隙間から
キラキラと光を帯びて流れた
その言葉からは
到底、堕落したものとは思えない
まさか・・・
私が瞳を細めた先に
それは輝いていた
穢れなき真実の器
馬鹿な・・・
これほど黒に染まりつつも
中身だけを清く保つことなど
出来る訳がない
私は驚き、否定しつつ
真実に眼を向けた
そして、彼が眠っている間に
そっと胸のプレートを剥ぎ取り
中を確かめたのだ
そこには
未だかつてない
白白と
煌々と
燃える魂が在ったのだ・・・
表は黒き鎧でも、心まで黒とは限らぬものよ
人はよく、見かけに寄らぬと言うことがある
まったくもってその通りだ・・・
私が驚かされることなど
先の戦より、今の今まで無かったこと
私はそれを思わず掬い取り
主の前へ差し伸べた
左に座すものはこう言う
血肉の世界がどうであれ
この魂は至高にして孤独を選び
我らの前に立ちはだかるだろう
だがそれは、魔なるものもにも属さず
常に公平であり
常に境界であるだろうと
右に座すものはこう言う
纏う黒を見抜く術は、地上に無かろう
その手で触れ
その言葉を耳にし
それを知ろうと思考せぬ限り
見破るものなど皆無に等しい
それほどまでにくっきりとはっきりと
それは燃えているのだ
主は何も言わず
ただ、嬉しそうに微笑んで居られる
私の掌の上で
等間隔で轟々と産声をあげる希望
果たしてどうすればここまでの事柄を顕現出来るのだろうか
私が見知って居る限りでは
人である限り
不可能なこと
なぜ、彼はそれを可能としたのか
私は、今この時も
眺め観察している・・・
by底励のサンダルフォン