弱虫
とあるところに
泣いてばかりいる小さな虫がおりました
他の虫たちがどうしたの?と
心配そうに肩を叩いてくれているのに
その虫は
泣いてばかり
頷きも答えようともしませんでした
心には
私の苦しみは誰にもわからない・・・
その一点ばかり巡っていました
虫は今日も泣き続けます
虫は今日も泣き続けます
今日も泣き続けます
今日も泣き続けます
今日も、今日も、今日も
泣いて、泣いて、泣き続けます
そして、一匹の同じ虫が傍に来て言いました
【同情を惹くのは止めろよ
死にたいなら死ねよ
助けが欲しいならそう言えよ
ただ泣いてばかりで何もせず
そこから動こうとしないのは
誰かに甘えすぎてるからだろ?
自分に甘えすぎているからだろ?】
虫は、さらに泣きました
しかし・・・
その頃には
声も枯れ果て
涙も止まり
痩せた人形のように
動けなくなっていたのです
虫は、まだ泣いています・・・
でも、それはもう届かないのです
通り過ぎる他の虫には笑う者
怪しいと警戒する者
様々見受けられるようになりました
ただ一人・・・
傍で静かに手を握ってくれている
深く杭を差し込んだ君以外は・・・
まだ泣いています
でも、心で泣き続けているのです
虫は、不思議でした
深く深く食い込んだあの言葉が
あの杭が憎くて憎くてしょうがないのに
それを打った本人の手が温かかったからです
虫は、かすれた声で小さく
【なんで?】と
とある日、不意に訪ねたのです
その虫は、ムスっとそっぽを向いて
【生きろ、生きて傍にいろ。】
答えにもならない答えを言いました
するとどうでしょう
うっすらと温かいものが頬を流れました
虫は、再び泣いていたのです
今度は、一人ではなく誰かと一緒に居ながら
泣いていたのです
声も出ていました
枯れたはずの声が蘇ったのです
虫は驚きました
失ったはずの力が
隅々まで行き渡って行くのです
泣きながら、泣きながら
体があったかくなっていくのです
どこからか
ありがとうと言う声が聞こえました
小さく泣きながら
ありがとう、ありがとう
なんども、なんども
ありがとう
そう、その言葉を言っているのは
間違いなく泣いている自分自身でした
傍にいるもう一匹は
泣き虫の頭を優しく撫でながら
言いました。
僕らは弱い虫だ
一匹じゃ何もできないし
何も支えられない
弱虫だ
でも、泣き虫の君よりは
ずっと強いと思ってる
だって、君は弱いということを認めなかったから
受け入れなかったから泣いてばかりいたんだ
でも、僕は弱いことを認めたから
受け入れたから
君の傍にいることができるんだ
弱いから君の傍にいるんだよ?
弱くて寂しがりで怖がりで・・・
君と一緒でないと
不安でしょうがなかったんだ
本当は泣きたかったさ
君と一緒に
でも、泣いてばかりより
泣くことを我慢したほうが
君が笑ってくれたときに
何倍も泣けると思ってさ・・・
虫はハッとしました
見上げた其処にある
顔がとても眩しくて
とても弱々しくて
今にも泣きそうだったのです
そして・・・
愛おしいと思えたのです
いつの間にか・・・
虫は笑っていました
ありがとうと笑っていました
それを見た
傍らの虫が静かに泣き始めました
今まで泣いてばかりいた虫に
甘えるように
ギュッと抱きしめながら
静かに泣き始めました
そして、今まで泣いていた虫が
静かに微笑みながら
頭を撫でていたのです・・・・
大丈夫、大丈夫と優しくささやきながら・・・
End
by放浪のキケロ