銀の吐息
カサカサと音を立てて
風が落ち葉で遊んでいる
コツコツと枝を鳴らす
桜並木の間から
透き通る高い空を覗いていた
なんて綺麗なんだろう
ふっと
吐いた息が
夕暮れの月に照らされて
銀色の雲になった
いつの間にか
闇に閉ざされた
僕の空間、世界
其処にある人の冷たさが
真っ白な温もりのない雪を降らせていた
冷ややかな目線が
氷柱のように鋭く光り
僕の心臓を貫いて
跪かせた
涙が、自身の両手に
気持ちの悪い温度で落ちてくる
どうしたらいいか・・・
その時は解らなかった
人でなくなればいい
僕は初めて
人を殺した
僕という人間性を
信頼するという感情を殺した
砕けたそれを踏みつけて
瞳の奥に狼を宿した
それから、じっと人を観察している
強く見せるために嘘をつきながら
欺くために嘘をつきながら
自分のために嘘をつきながら
生きるために・・・、嘘をつきながら
一定の距離を守りながら
人と触れ合う
好きになることがわからなくなった
愛することがわからなくなった
手をつなぐことが怖くなって
言葉を交わすことも
面倒になっていった
どこからか差し込んだ日差しが
心の奥底に届いた
どうやって来たのか解らない
けれども
その光はたしかに届いていた
光と温もりを帯びた
朝の光り
気持ちいい
心地いい
光に照らされた僕の世界は
真っ黒ではなく
真っ白だった
降り積もった
言葉の山が
キラキラと輝いて居る
触れれば冷たいのに
どこか愛おしくなった
儚く見えた
思わず、ふっと笑った吐息が
絶対零度の中で凍りつき
キラキラと空中を漂い
在りもしない宝石を作り出していた
銀の吐息が
鏡のように光を反射している
キラキラと
キラキラと
其処に広がった僕の世界と共に
輝いている
本当にここは僕の中なのだろうか
余りにも純白で
余りにも広い心の世界
作り上げてきた全てを否定するかのように佇み
否定し続けたものを抱きしめるように笑っている
どこから聞こえた
優しい言葉が
大きな大きな、涙を誘い
ゆっくりとゆっくりと溢れ出た
ゆっくりとゆっくりと顎先へ流れ
トンっと離れていった
その一粒は
昨日見上げた高い空と僕との間にある
水晶のように透明で
温かかった・・・
byキケロw