彫刻 | 梟霊のブログ

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とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

彫刻
 
僕が、初めて君と出会い
恋に落ちた
君を好きだと
君を愛していると
どこか遠くに旅立つその日まで
何度も伝えた
それは、いつしか
僕の中に真っ白な小部屋を作り
水晶で君を作り上げるほどだった・・・
 
君と初めて手をつないだ
帰り道
僕の心臓は
大きく躍動していた
痛いくらい大きく膨らんでは
一気に小さくなった
そのころ
小さな小部屋の中では
大きく鼓動する
喜び、嬉しさ、緊張、不安
それらを源として
水晶を削りだしていた
まだ未熟で荒削り
カタチばかりで
目標が定まらない
 
君と誓い合い
交わした指輪と口付け
ゆっくりと過ぎていった
祝福の声の中
僕の心の泉に
君をしっかりと映した
波立つことがなく
誰が見ていようとも
好きだと言えた
そのころ・・・
小さな小部屋では
決心と覚悟、情熱と信念、希望
それらを源として
水晶を削りだしていた
慣れた手つきで
大雑把だけと
力強く
君の全体が見えていた
 
子供ができて
初めて夫婦喧嘩
初めて夫婦で泣いた
初めて家族で笑った
何もかも初めてで
新しい日々
そこには常に新しい光が溢れ
どうじに
失う怖さが影を落とした
そのころ
小さな小部屋では
打ち込む速度を少し落として
眺めては打ち
また
眺めてを繰り返していた
 
いつしか二人だけになった
子供たちが巣立ち
また、あの頃のように二人だけ
でも、交わす言葉は思い出ばかり・・・
すこし、切ない風が吹き抜ける
そして・・・
君が、逝く
そのころ
小さな小部屋では
細った腕で
震える手で
ゆっくりとゆっくりと削り
君の微笑を
君の輝きを
老眼の眼で
にらみながら
仕上げていた・・・
 
数年・・・
一人・・・
写真の中の君の笑顔
変わらずに向けられる・・・
孤独な家の中に
ぽつりと生きている
でも・・・
小さな小部屋では
安心、清らか、懐かしさ、寂しさ
そして
永遠の愛
それらを源として
出来上がった君の姿を
磨いていた・・・
いつの間にか空いた
小部屋の窓
ゆれるカーテン
聞こえる小鳥たちのさえずり
よぼよぼの手で
最後の一拭きを終えたとき
差し込んだ光で
輝きだした君
まるで・・・ご苦労様とでも言うようだ
あぁ・・・、ようやくできた
僕の中の君
でも、さすがに翼をつけたのは間違いだったか・・・
苦笑いを浮かべながら眺めた
 
小部屋のドアを誰かが開けた
 
【あなた?いつまでそこにいるつもり?さぁ、早く仕度しなさい?】
 
【ああ、今逝くよ。少し待っててくれ。】
 
 
僕は、頷いて
天使になった君だけを残し
純白の小部屋を
あとにした・・・
 
残された水晶は
本物の天使のように
いつまでも
いつまでも
輝いている
誰も知らない
何処かの小部屋で
今も一人
輝き続けている・・・