天使の涙~翼を失った天使が願った空~
僕が子供の頃
神木の下に
天使が落ちてきた
彼女は
とても傷つき
とても弱っていた
綺麗な人
でも、僕にはそれ以上に怖かった
僕の小さな手が
彼女の頬に触れると
うっすらと眼をあけて
こっちを見た
そして、力ない手で
僕を優しく撫でてくれた・・・
僕が少し大人になったころ
僕は気がついた
彼女は僕以外には見えていない
そして
あの時の美しさのまま変わらない
大きな白い羽は
もう、どこにでも行けるくらい
力強く見えるのに
彼女は僕の近くから
離れようとはしなかった
僕が大人になって
僕は、天使から距離を置いた
寂しげな君
寂しげに笑う君
時折、空を見上げ
何かを想っている
「飛びたいの?」
僕は、たまに聞いてみる
でも、天使は首を横に振るだけ
その後には
必ず、幼い頃と同じように
優しく抱きしめてくれた
その瞳に涙を浮かばせながら・・・・
僕は想う
きっと、彼女は
もう、飛べないんだ
おおぞらを自由に
飛ぶことができないんだ
だから、いつでも
いつまでも空を見上げ
泣いているんだ
でも、なぜ此処にいるのだろう・・・
僕にはわからなかった・・・
私は、もう飛べない
彼は、気がついているだろう
本来は、交わることのない
この出会い
あの時の君は、私を恐れてた
あの震えた小さな手は
小さな眼差しは
今でも覚えている
そして、この頬に触れた
君の優しさも・・・
少し・・・
また少し・・・
君は、大きくなっていく
時々、不思議そうに見つめ
不思議そうに聴いてくる
カタチは元に戻っても
飛ぶことはできない
私は、謳いもしているのだが
君には聞こえていないようだ
この悲しい気持ちが
届いていないというのは
幸運か、不幸なのか
解らないが
もう、どちらでもかまわない
君が、私に生きる希望を与えてくれた
だから私も
せめて
君の幸せを
あの空のずっと向こうにいる
優しい人に願おう
君の傍らで
君が、健やかであるように
見守っていよう・・・
君を抱きしめるたびに
私は、何度も祈っていた・・・
僕が見上げた空は
私が願った空は
ずっと蒼く
ずっと高くて
どこまでも
どこまでも
光に満ちていた・・・
そして、白い雲が
翼のように
羽を広げては
消えていった・・・