子狐の春
名残雪の小言を
せせらぎに聴いて
見上げた空に花が舞う
こぶしの花がほろりふらり
ゆれ落ちて
ちいさなお鼻の上に
土のにおいが
柔らかになびき
温かな日差しが
丘に降る
風が走る
若草をなでる
子狐は舞台に上がる
春に誘われて
一人、一人、一人
ほら。ふわふわと尾を揺らし
ほら。ふわふわと毛をなびかせて
蝶たちと笑いあった
春の白の夢で
小鳥の声が唄に変わって
子狐は飛び起きた
風が横切り
木々が横切り
草を蹴飛ばして
丘に出る
福寿草が染めている
金色に
フキノトウが見上げる
鶯色に
残りの雪が
さびしげに
子狐にいらっしゃいと告げた
天に聞く喜びの声
遠くまで遠くまで
嬉しすぎて
飛び込んだ
春の始まりの園【その】
春の日差しはスポットライト
春の丘は貸切の舞台
春の風は踊り相手
春の花はオーケストラ
春の森は静かな観客
子狐はゆっくりと踊りだした
舞台の真ん中で
トント、トント
トン・・・、トトン♪