朧穂の草原
温かな太陽が
山の向こうから顔を覗かせた
秋の風がほのかな実りをたずさえる
稲たちをなでてゆく
それを追うかのように
光がはしる
僕の眼にはまぶしすぎる
まだ、どこかの夢の中にでもいるのだろうか・・・
小鳥たちよ
どうか、この夢から僕を救い上げておくれ?
虫たちよ
どうか、その音色で僕を覚ましておくれ?
かさかさと
淡い金色の稲穂たちが
風とじゃれあっている
僕は、その真ん中でずっと遠くにある
町・・・を
見つめていた
静かだった。サラサラと時も光も
僕を追い越してゆく
少しはずれのあぜ道では
子供たちが、けらっけらと翔けている
空高き果てに浮かぶ
朧げな雲
鏡のように僕の思い出を
彼らに重ねて映した・・・
あの頃から・・・
夢現(ゆめうつつ)
狭間か底か
何処とも知れぬ
あの日々よ
うつろう記憶に
かかる霞の
もどかしきもあり
もどかしくもなし
ただ、その影にて
稲穂とぞしる
この同じ空の下
その稲穂があるは
わがふるさとのみ
朧げなればその稲穂
草原のごとく広く染まり
われ一人
ただ、我一人
そこにて、かのものを待つ・・・
ただ静かに
いつまでも、いつまでも。
思い出が
誰かの思い出が
僕の中に染み込んでくる
じんわりと
実りの光とともに