たばこを2~3本吸っただろうか…ボクはなかなか返事をもらえないことに苛立ちを感じていた…。2万円という現金を使ってメールしているんだ…。


やはり人間お金が関わってくるとなぜか嫌な気持ちになるのは当たり前だ。ボクのメール返信から1時間経過したくらいにやっと返信がきた。夕方の19時手前。


『急に親が実家から出てきてちょっと食事しなくちゃいけなくなっちゃいました(;_;)今日会いたいけれど後日にできませんかぁ?』こんな内容だった。


落胆した。30分もかかるコンビニにまで走って、はっきりいえば今日会うためにかなり頑張った。ボクは本当に癒しだけを求めてただ食事できれば良かったのに。


今日会うことを諦められないボクは『ほんの数分でもいいんです。メールアドレスだって交換できるし、お互いに顔見知りになれるから5分だけでも会いませんか?』


彼女からの返事はすぐだった。『もうお母さんと一緒に行動してるからごめんなさい。こんなことになってしまって…次は内緒で寮の部屋で会いましょう(*^^*)』


もう何も言えなかった。ただ次は彼女の…異性の部屋に入れるそれだけが脳裏に残っていて、夕暮れ時を自転車でのんびり自宅へと帰宅したのだった…。


寝る前にもらったメール『明日は仕事になりますか?今母と別れてタクシーで寮に帰るところです。今日は残念でしたが部屋の掃除しておきますからね♪おやすみなさい』


ボクは明日会いたい、そう思って『明日の仕事終わり21時頃、食事したいのでスケジュールのほう教えてくださいね。おやすみなさい。今日のことは気にしないで』


明日になれば…そう明日の仕事が終われば…。実は彼女とのメールはこれが最後だった…

やっとボクはビットキャッシュがおいてあるコンビニをみつけて、片道30分かけてそこまでポイントを購入するために自転車をフルスピードで漕いで向かった。


汗だくになりながらも目的のコンビニに到着!よしこれであのメールの本文が読める…。もう10通近く内容が読めないメールが溜まっている。こんなボクに本当に会いたい。


そういう切実な印象が持てて、そのあとのことには全く検討もつかないほど浮かれていた。『このままじゃ埒があかないから、アドレス伝えるね。aira-mixberry』


もうこれは本当に会いたいんだと確信を得たボクは貯めに貯めていた貯金を崩して、とりあえず今後のことも考えて5千円分のビットキャッシュを4枚購入した。馬鹿である。


すぐさまサイトに問い合わせして方法を聞き出し、その説明通りに登録をしてポイントが無事追加された。やっと見れる、しかもアドレスまで載っているではないか!


すぐさま最初にもらったあの気になっていたメールタイトル『それじゃあとは時間だけですね♪えっと希望は』のメールを探してすぐに開封した。これからはこの動作で150円かかってしまうのだ。


メールの内容はこう『午後であれば何時でもいいんですけど、23時過ぎると学生寮なので門限があって…その辺は考えてくれていますか?』ちょっと残念だったが、まだアドレスがある!


アドレスの内容はこう『途中まで書いたんだけど、やっぱりこれは女として卑怯かなって…だって貴方みたいな優しい人だったらほかに会いたがっている人、沢山いますよね?』


急いで現金まで使ったのに、アドレスに時間さえも明記されていない。すぐ返事をした。『ちょっと訳あって返事が遅れてしまいました。ごめんなさい。その今日何時にしますか?』


そのままコンビニの喫煙場所で一服しながら返事を待った…その時どんな返事が待ち受けているか知る由もなかった…。

前回の続き。とりあえずとてつもなく返事がはやい。まるで予め用意されている文章を送ってきてる様なそんな連絡がきた。


『こちらこそ私みたいな大学生と待ち合わせしてくれて嬉しいです(*^^*)とりあえず最寄り駅を教えてもらえませんか?』


タイトルはもう忘れてしまったがこんな内容のメールだった。とりあえず自宅を知られてしまうのはなんとなく嫌だったボクは最寄り駅を伝えた。


『●●駅西口なんですけど貴女と距離が近ければ今日会えると嬉しいです。車がないですが、もし遠くてもボクのほうから足を運びますから!』


そう返事をして5分前後で返事がくる大学生の彼女とのメールをかなり楽しみながら続けた。そしてやっとこさ待ち合わせ場所が決まり目印が決まってあとは時間のみになった。


突如事態が一変する。タイトルに『それじゃあとは時間だけですね♪えっと希望は』その先の本文を見るのにポイントの残高が足りないではないか…。


完全無料といっても300ポイント登録の際に持っていて、送信に15ポイント・閲覧に15ポイントと一通30ポイントかかるシステムだったのだ…。ボクは焦った。


時間が分からないとどうしようもない。ただそのメールの内容を見るにはポイントを買わなければいけないと記されている。値段は500ポイントで5000円。


閲覧には15ポイントで良いから5000円もかける必要がない…。無駄だろうとここで諦める人がたぶん正解なんだと思うけれどボクは迷わず購入方法を調べた。


ビットキャッシュなどのオンラインマネーをコンビニで購入するか、クレジットカード登録で引き落とすかの方法みたいだった。


クレジットカードはなんとなく怖かったので、いつも現金で支払をしていたボクは迷わず近くのコンビニでビットキャッシュを購入しにいくことを決めたのだった。


その間にも『どうしたの?時間確認してもらえたら大丈夫か返事ちょうだい♪』などというメールが20分置きに届いていた…。

現在のボクから見たらとんでもない物語の始まりだ。なぜあそこで自分の欲求を我慢することができなかったのか?現実と向き合って戦うことから逃げたのだろうか?今となっては後の祭り。


そう…ボクは雑誌の裏表紙にのっていた出会い系サイトに登録したのだった。社会人一年目の夏、慣れないインターネットでフリーメールをゲット。


そのアドレスを使って無料でできるというサイトに登録。プロフはとりあえず大真面目に『純粋に出会える人募集。経験0ですが優しさと真面目さなら負けません』


こう添えて女性からのメール連絡を待った…。あれ?登録をしてからたった5分後のこと…。早速メールが届いた!顔の写真も無しでプロフも適当。


メールが来た女性は大学生の凄く可愛い子だった。メールの内容はこうだ。『出会い系初登録(*^^*)誰かいるかなって掲示板みたら貴方を見つけて連絡★』


とりあえずボクと同じ様に初めて登録してメールを送ってきてくれたのだ。この境遇にボクはなぜか安心感を覚えてすぐに返事を返すことになった。


『初めまして。本当にボクなんかとメールしてくれるんですか?できれば今日は日曜日だし、ご飯くらいだったら奢りますよ?もし良かったら早速待ち合わせしませんか?今年社会人1年目の営業マンです。』


今覚えばかなりの失礼極まりない内容。はっきりいって相手は可愛ければとりあえず会いたい…話したい…そんな心境だったんだ…。ボクは返信ボタンをおして緊張しながらも返事を待った。

スポーツだめ。勉強普通。容姿最悪のボクにとっては彼女なんて夢のまた夢の…幻想だった。勿論のことお付き合いはおろか、大学に行くまでロクに女性と面識がなく育った。


大学では生まれ変わりたいと思ったボク…温泉サークルに入ったり、慣れない人との会話や遊びに飲み会になにかと頑張った。結果、中学高校とは違った楽しい学校生活が送れたが彼女はできなかった。


大学を4年でスムーズに抜け、地元中堅会社の営業として就職して1年。係長には怒鳴られコンビニ弁当を食べながら独り寂しい毎日同じサイクルの生活を送る。


寂しかった。ただ単純に女性と会話できるだけでも良かったんだ。でもボクはどうしても男としての自信が持てずにくすぶっていた。


そうして仕事を続け2年、なにも変わらずにもうこの先楽しみなんてなに一つないや…そう感じて止まないボクはある雑誌の裏表紙にのっていた出会い系サイト広告をまじまじと読んでいた。


表紙にのっている可愛い女の子。最悪だとは思うけれど、もう誰だってどんな子だって良かった。ボクは異性と少しでも共通点が欲しかっただけなんだ…


その日無料で最初はできるという誘惑に負けて登録した。物語の…はじまり。