この記事はネタバレを含むので、嫌な方は見ないでください。


右京さんとたまきさんが映画鑑賞していた映画館で殺人事件が発生。
被害者は、上映されていた60年代映画の名作「海峡の虹」の映画監督だった織原晃一郎。
自身の映画の上映中にナイフで刺されたのだった。
監督が死ぬことで、生前監督が拒んでいたDVD化が一気に進むだろうという理由で、配給会社の海老名が疑われるも、犯人は映画館の掃除婦だった。
この掃除婦、赤井のぶ子は、「海峡の虹」の出演者でもあった。そんな彼女の犯行理由、それは、監督が生前、自分の映画を見て死にたい、と言っていたから。
末期の癌に蝕まれていた監督の意を尊重し、実行した、監督と映画を愛した女性による悲しい犯罪だったのだった。


良作の回だと思います。映画スタッフの殺人といえば、これまた良作の「最期の灯」が思い出深いですが、こちらも引けをとりません。
監督はみんなに愛されていたということが分かり、さらに涙を誘います。
右京と薫が話を聞きに行った映画関係者は監督のことを良くは言わなかったのですが、しかし、殺人現場の映画館に花を手向け、一緒に仕事をしたかったと語る。
確かに偏屈ではあったんだけれども、その才能や映画に対する真摯な姿勢が、皆の心を打ったのだろうな。
見所は・・・
映画鑑賞をデートではないと言い切る右京さんの変な頑固。
内村の態度。
犯人の一人として疑われた「海峡の虹」の主演女優島加代子の容疑が晴れた時のあの顔。
内村は島加代子のファンであり、やはり「海峡の虹」も好きだったようで。
そして普段は怒るに違いない特命の行動にいやに寛容。
極めつけは映画の台詞を口に出す始末。恐らくそれを知らない中園とのやり取りは笑えます

~映画の台詞~
「見て、虹」
「明日はきっと晴れる」
~内村と中園の会話~
内村 「虹が出てるなぁ」
中園 「は? あ・・・見当たりませんが」
内村 「明日は晴れだ」
中園 「・・・」
そして映画監督役の森山周一郎の演技。
ダンディーな声はもちろん素敵ですが、古きよき映画人としてのプライドやその凋落っぷり。
さらに殺害を待ち望んでいたかのような安らかな笑顔。特にその殺されるときの笑顔

「映画の神様が自分を迎えに来てくれたんだなぁ」と感じていたのでしょうか、赤木を見る監督の顔は、天使を見ているようでもあります。
どれにつけても素晴らしいと思いました。
右京の粋な計らい。
わざと遠回りし、回りくどいやり方で犯人を追い詰めていく。
もちろん、それが一種の快楽なのでは?と思えてしまうような右京の悪い癖ではあるのですが、今回は勝手が違ったようで。
今回に関しては、犯人が観念して自首をするように促すために、そのような回りくどい追い詰め方をしたのです。
自首扱いだと刑が軽くなる可能性が大きいですから。
憎しみや個人的な動機での殺人ではないと、右京さんが確信を持っていたからこその粋な計らいなのでしょう。
しかも、薫が観たいと言い出した「海峡の虹」を、赤木のぶ子にも見せるという粋。
しばらくは、この映画を観ることは出来ないでしょうから、逮捕される前に観てもらうことで、これからおこる様々なことを頑張ってほしいという右京なりのエールにも受け取れます。
殺人シーンと、映画のシーンのリンク。
それから、右京と薫の最後の歩みだすシーンと、映画のラストの島加代子の演じる主人公の歩みだすシーンのリンク。
今回は、そういった映画と現実のリンクが見られます。


角田課長が特命の部屋に入り、右京さんが、今回の犯行の疑問を薫と課長に説明している際に登場。
大木は最初違う人物と話していたのですが、なぜか小松が出てくると、いつものように2人で覗き。
しかも、今回の大木、のそっと近づいてきます。
しかし右京さんが「海峡の虹」のあらすじを話し始めると、なぜか、大木&小松コンビは解散…映画には興味がないのか?