
明洞や南大門などが集まるソウルの中心部にそびえる南山(ナムサン)。
海抜265メートルの小高い山の山頂には身長236メートルの南山タワーが立つ。
この辺りは散歩、山登りなどソウル市民の憩いの場であり、観光名所でもある。
ソウル国際マラソンの翌日、実に久しぶりに訪ねてみた。
振り返れば、前に上ったのは20年以上前だったろうか。
南山といえば、ケーブルカーを使うのが便利。ただ、この日は工事中とかで運休、タクシーと路線バスを乗り継いだ。山頂の展望台からは、ソウル市内を一望できた。ここでも中国系などアジア系の外国人観光客が目立ちがあちこちで歓声が聞こえた。展望台には見渡せる景色の中の主な建物の案内図があった。そのなかには、米国のホワイトハウスに相当する大統領官邸、青瓦台もあった。すっかり観光地になっていた。実は南山といえば、軍出身政権下の1970年代には暗いイメージもあった。反体制派を取り締まるKCIA(韓国中央情報部)があり、南山はKCIAを指す隠語にもなっていた記憶がある。また、北朝鮮などに街の見取り図を見せないという保安上の理由から、ケーブルカーから街をカメラ撮影することが禁止されていた覚えもある。長い年月の中、民主化、北朝鮮との緊張緩和が進んだことを実感した。南山タワーの展望台に上るエレベーターの入り口。東京タワーなど他の世界のタワーも紹介している。世界のタワーと並べると、236メートルは低い方なのに堂々と描いてあるところがいい。展望台に行くと、カップルたちの写真を張り付けるコーナーがあった。「愛している」や「サランへ」から類推すると、世界各国の言語で「愛している」を表現しているようだ。タワーを降りて、周りを歩くと、周辺の柵が鍵だらけ。柵は隠れ、鍵が何重にも重なって盛り上がっている。恋人たちの変わらぬ愛を誓う(あるいは願う)ために鍵をつけるのだろう。大阪でも梅田に愛の鍵を付ける場所がある。鍵にはハートがあふれている。韓国語が圧倒的に多かったが、日本語もいくつかあった。テラスのような場所が、鍵で囲まれている。説明書きには、夜光の鍵と書かれていた。おそらく、夜光塗料か何かで夜は輝くようになっているのだろう。しっかり鍵の自動販売機もあった。つまり、南山をラブ♡ラブ♡の場所として売り込もうという戦略なのだろう。日本流にいえば、「恋人の聖地」作戦だ。市街地を見下ろす展望台の柵にも少しずつ、鍵が付き始めていた。しばらくすれば、ここも鈴なりのようになるのだろう。