
7月29日(月)
お気に入りの垣根涼介著。中公文庫。
小笠原諸島を舞台にした不思議な人間啓発セミナーに参加した4人をめぐる物語。
引きこもりの大学生、元やくざ、売れない女性フリーライター、定年したサラリーマン。
4人それぞれが、「人生やりなおし」を求めてセミナーに参加した経緯や思いを明らかにし、
なんとか再生に踏み出すまでを描いた。
明日への希望を抱かせる前向きなストーリー、人生応援歌的な小説ともいえる。
小笠原諸島を主人公とした「小笠原物語」でもある。
小笠原は太平洋戦争で戦火に見舞われ、終戦後は1968年まで米国領だった。
日本→米国→日本とデジタル的に国が変わり、その時々に住民の生活が激変し、人も移動した。
そして、最近では豊かな自然に魅かれて移り住む新住民も。
戦前から住む日本人、戦前に海外から移り住んだ元外国人、戦後に移り住んだ新住民…。
セミナー参加者が島内を歩き、住民の話を聞くというストーリーの中で小笠原独特の多層構造が分かりやすく描かれている。
その意味では教養書としても面白い一冊だ。
人生についてしばし思いを巡らし、教養も高めるそんな夏休みの読書としては打ってつけ。
ただ、名著「ワイルド・ソウル」で「ブラジル移民」という形で国から棄てられた人々の運命を赤裸々に描いた筆者なのだから、国家に翻弄された小笠原の人々の運命をもう少しワイルドに取り上げてほしかった、とも思う。