
2月26日(火)
坂東真砂子著、角川文庫。敗戦前と敗戦後の全二巻。
題名とカバーの絵に何となく心惹かれて手に取った。
正解だった。面白かった。自分が今までに読んだ小説たちと少し毛色も違い、新鮮でもあった。
こんな出会いは読書の楽しみの一つである。
第二次世界大戦で日本が敗れる直前の箱根で物語がスタートする。
既に敗戦国となっていたドイツからアルゼンチンに向かう途中だったドイツ軍の潜水艦艦長が死亡。
その死因を調べるために日本海軍の軍人と、主人公の一人である日本男子の通訳が箱根を訪れる。
日本の敗戦によって、この死亡事件の話は途切れるが、
戦後に国際的な情報戦の火種となって改めて浮上、主人公が調査を開始する。
こうしたミステリーを軸とすれば、もう一つの軸が女たちの生き様。
死んだ艦長の率いるドイツ軍人たちを逗留させた温泉旅館の女将や女従業員が、
戦後の混乱を生き抜く姿が描かれる。
そして第三の柱が、敗戦前後の日本の風景。
箱根がドイツ人など外国人の隔離場所として使われていた状況や、
敗戦直後の東京の風景などが描かれる。
ミステリーを楽しみつつ、たくましい女の生き様に興味を感じ、敗戦前後の日本の雰囲気を思いをはせる。
一粒で三つの味を楽しんだ。