
3月16日(金)
予備知識を持たずに何となくチケットを買った作品が意外に面白くて得した気持ちになる……。
そんな経験が時々あるが、今回もそうだった。
東京で仕事が予定外に早く終わったので映画でも見ようかと足を延ばした日比谷シャンテ。
何となく意味深な題名と、しゃれたポスターにも魅かれて選んだ。
上映時間79分というコンパクトさも手軽な感じだった。
物語は二組の夫婦計4人の対話劇。
子供同士のけんかの後始末のため、ケガをさせられた「被害者」の親が「加害者」の親を家に呼ぶ。
最初は両者紳士的に対応し、ケンカの事実関係を文章で確認、その後善後策の話し合いに入るはずだった。
ただ、その後のやり取りで徐々に食い違いが発生、事態の収拾がつかなくなる。
やがてはそれぞれが本音で相手を批判したり、夫婦の間の日頃の不満、ストレスが噴出したりと混乱状態。
夫婦同士が敵対したかと思えば、夫連合と妻連合が敵対したりと、攻守の構図もころころ変わる。
舞台は被害者側夫婦の家の中というワンシーンだけ。
登場人物は4人だけ、という限られた空間、人物の世界でめまぐるしい神経戦が展開される。
発端は子供同士のケンカだったが、いつのまにか大人同士のケンカとなり、
子供のケンカはどこかに行ってしまったという形だ。
ジョディ―・フォスターは顔中に筋肉の筋を立てて怒声を上げる。
ケイト・ウインスレットは豊満な体をゆすりながらゲロをはく。
クリストフ・ヴォルツはいかにも理屈っぽい嫌な奴らしく厭味ったらしく口をはさむ。
ジョン・C・ライリーはよく言えば大らか、悪く言えば大雑把なオヤジらしくコーヒーや酒を勧める。
個性的で芸達者な4人のバトルがまるでノーカットの通し撮影ではないかと思わせるように続く。
原作はパリ、ロンドン、ブロードウェイで人気を博した舞台劇。
日本で舞台劇を上映するとして、どんな役者さんたちの組み合わせにしたら面白いだろう、
と勝手に想像するのも一興だ。