
2月11日(土)
物語が終わり、スクリーンが暗転しても、キャスト紹介が終わり完全な終わりになるまで席を立つ気にならなかった。
暗転すると立ち去る場合が多いので珍しいことだ。
自分だけではない。場内の皆が席を立たずにいた。
特に感動でしびれたというわけではないが、心地良い、温かさにフワーッと包まれているようだった。
北海道・洞爺湖湖畔の豊かな自然の中でベーカリーカフェを営む夫婦が、
訪れる客を温かく迎え、やさしく気遣うという素朴な物語。
恋を失った若い女性、母を失った幼い娘、娘を失った老夫婦が客として訪れ、立ち直る。
文章で書くと極めて平凡で面白みがなくなるが、
映画そのものは実に味わい深かった。
最大の理由は、主人公、原田知世の存在。
カフェを営む夫婦の妻役だったが、この映画は彼女のために、彼女による、彼女の作品に思えた。
原田知世は45歳で、今年がデビュー30周年だそうだが、
自分が20代に観た「時をかける少女」「天国に一番近い島」とまるで変わっていない。
泣いたり、怒ったり、笑ったり、喜んだりという強い感情表現をせず、
フワーッと包み込みように微笑んでいる、そんな表情がイメージにこびりついている。
悪く言えば、とらえどころがないともいえるし、よく言えば何とも言えない包容力がある。
彼女の笑顔が笑顔がこの映画のテイストを決めた気がする。
その彼女に引っ張られて夫役の大泉洋もいい味を出した。
舞台となった月浦の景色を見て、
米国映画「ミス・ポター」(2006年)で映し出された英国・湖水地方が頭に浮かんだ。
湖があり、青い山があり、広い空がある。
何とも包容力のある景色だった。
この作品のテーマは「温かい包容力」ではないか、と思う。