皆さま、こんにちは!

OVERHEAT THE RAINBOW の なかちゃんです☆彡

 

 

 

配信動画、夏目漱石「永日小品」

 

十二回目「山鳥」

アップしました(^_-)-☆

 

 

 

 

 

毎回のタイトル画。

 

ゆうかさんに心意を尋ね

関わることども調べながら

手掛けてゆくうちに

 

自らの作品の印象おのずと顔出し

相乗効果生み出せれば

思いもよらぬ発見が・・・

 

なきにしもあらず。

 

 

 

 

 

この度の「山鳥」

 

ある冬の寒い日に、突如漱石邸に現れた一人の青年をめぐるお話。

 

 

 

“青年は大勢いる所へ、一羽の山鳥を提げて這入って来た。”

 

“初対面の挨拶が済むと、その山鳥を座の真中に出して、「国から届きましたから」といって、それを当座の贈物にした。”

 

 

 

絞めて縄で吊るされた山鳥。

青年から敬愛する師へと、一方的であるとはいえまるで生贄のように、厳かに捧げられたであろう山のご馳走。

 

 

 

なかちゃんに閃いたのは、西洋の静物画。

薄暗い食堂のテーブルに果物やパンと一緒くたに並べられ、つましい家族の糧となる鳥。

タイトル画にするなら、そんな山鳥のシルエットかな・・・

 

 

ところがゆうかさん曰く、

「鳥籠に入れられた山鳥」だと。

 

「静かに最期の時を待ってるイメージね」

 

 

ガーン、と殴られた。

「文鳥」ならいざ知らず、

「山鳥」と鳥籠とは結び付かない気もしたが。

 

 

 

 

 

“もっとも著しく見えたのは、彼の近眼よりも、彼の薄黒い口髭よりも、彼の穿いていた袴であった。それは小倉織で、普通の学生には見出し得べからざるほどに、太い縞柄の派手な物であった。彼はこの袴の上に両手を載せて、

「自分は南部のものだ」と云った。”

 

 

 

山鳥の茶色な身体は長く尾を引き、

その尾羽は黒と白の縞が鮮やかに映えている。

 

山鳥の写真を眺めているうちに・・・

一見地味な「青年」には不釣り合であるような、

派手な小倉織の袴の縞と山鳥の尾羽とが

何だか重なって見えて来た。

 

 

 

拝啓先夜は失礼其節は好物御持参御蔭にて諸君子一夕の歓を添へ

申候十和田山諸景写真数葉是亦御親切に御寄贈難有御礼申上候

豊年祭は面白き事と存候出来るなら御供致し度然し種々用事も

控居候事故是非の御約束も仕かね候先は右御礼迄 勿々頓首

   一月二十六日        夏目金之助

 市川文丸様

(「漱石全集第二十三巻」岩波書店より)

 

 

 

漱石先生から文丸君へのお手紙。

「山鳥」の青年は、どうもこの文丸君らしい。

 

故郷に錦飾らんと、愛する陸奥の国をばあとにして、

当時の漱石住まう近くで、苦学中であった模様。

 

 

 

“青年は一週間ほど経ってまた来た。今度は自分の作った原稿を携えていた。”

 

“かようにして彼は来るたびごとに、書いたものを何か置いて行かない事はなかった。”

 

「これから文を売って口を糊するつもりだ」

 

 

 

青年は文学を志していたのか。

漱石先生、自分の門戸を叩いたこの見ず知らずの青年へ

寸暇を惜しみながらも援助は惜しみなく注がれた模様。

 

 

 

拝啓漸く小閑を偸んで「白桃花」を片付けました。至極真率に出来ました。此所頗る現今流行の妙にひねくれた人間を書くよりも快よく思ひます。真率は頗る面白う御座います。然し叙事が少々平板に流れて刺激が足りない所があります。即ち大味でうま味がない様な所もあります・・・其外色々云へばありますが、まあこんな変な点が第一気につきます。然し好い所は前に申した通り真率な書き方にあります。所が万事事実其物を写したものでないから、真率にも拘はらず今の様な可笑しな点が生ずるのであります 妄評多罪

     四月八日     夏目金之助

市川様

 

 

 

鳥籠の山鳥そのものが青年に思えて来た。

そうして、切り絵で籠の編み目に悩んだ時・・・

 

そうだ、原稿用紙!

 

原稿用紙の升目を籠の編み目に

捕らわれている山鳥ならぬ青年とするならば

この物語の象徴としてふさわしいかもしれない。

 

となると、ゆうかさんの鳥籠説は見事立証される!?

いやあ~参りました、と

ひとり合点するなかちゃんなのでありました。

 

 

 

 

 

さて、いつしか姿を見せなくなったこの青年。

 

 

“春が過ぎて、夏になって、この青年の事もいつか忘れるようになった或日”

 

“彼は突然やって来た。”

 

「金を二十円貸して下さい」

 

 

“そうして、また青年の事を忘れるようになった。そのうち冬が来た。例のごとく忙しい正月を迎えた。客の来ない隙間を見て、仕事をしていると、下女が油紙に包んだ小包を持って来た。どさりと音のする丸い物である。差出人の名前は、忘れていた、いつぞやの青年である。油紙を解いて新聞紙を剥ぐと、中から一羽の山鳥が出た。手紙がついている。”

 

 

「その後いろいろの事情があって、今国へ帰っている。御恩借の金子は三月頃上京の説是非御返しをするつもりだ」

 

 

 

拝啓御帰省中の由承知仕候定めて雪深き春を迎へられたる事と存候当地別に変りたる松飾もなく無事の正月に候

御恵送の山鳥一羽安着御芳志難有候先年の一夕を思ひ出し候

来る人あらば又一椀の羹をわかたんと存候

御用立申候金子については御心配御無用に候

寒気烈敷砌随分御自愛可然 草々頓首

   一月七日        夏目金之助

 市川文丸様

 

 

 

 

山鳥のとりもつご縁にどこまでも

かっこたるかな鼓のひびき・・・

 

 

byなかちゃん