子ども中心の対策にシフトすべき

 では、いじめを減らす、または、いじめをなくすためにはどのようにすればよいのだろうか。筆者は、いじめ解決に子どもたちが参加することがもっと注目されてもよいのではないかと思う。これまでの学校、教員、もしくは教委中心の「いじめ対策」から、児童・生徒が中心の対策に方針を転換すべきだ。

 いじめ自殺が起きると、すぐに学校や教委の対応が注目される。だが、学校や教委を中心とした対応には限界があるのではないだろうか。いじめは、もちろん学校問題であり、教育問題である。しかし同時に、子ども同士の人間関係の問題でもある。

 欧米では、いじめについてクラスで討議する場を設けることが対策に盛り込まれている。子どもたちのなかから「仲裁役」を選び、子ども同士でいじめ解決に乗り出す。

 日本でも、一部の学校が、こうした子ども中心の対策を取っている。かつて私が取材した学校では、生徒会がいじめに関する相談を受け付けていた。生徒会はその内容を外部には話さない守秘義務を負っており、教員には知られない仕組みになっていた。相談に来る生徒が「チクリ」と見られるリスクを減らすための工夫だ。

 肝心の“加害者”への対策も必要だ。いじめは、「いじめる人(加害者)」と「いじめられる人(被害者)」といった関係のほか、「見て見ぬふりをする人(傍観者)」や「いじめをはやし立てる人(観客)」といった四層構造で成り立っている。それぞれに対応したカウンセリングなどを実施しなければならない。

 文部科学省は10月19日に「都道府県・指定都市生徒指導担当課長緊急連絡会議」を開催。「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」 を配布した。しかし、いじめ対策に児童生徒がかかわる方法については、残念ながら触れられていなかった。


対応の前提として、相談窓口、実態調査を充実させる

 最後に、「自殺対策」について述べたい。いじめのみならず、子どもが絶望感を抱く環境に置かれた場合、どのようにすればよいのか。電話やインターネットの相談窓口があることを広く周知すべきだ。例えば「社会福祉法人いのちの電話」 は、電話相談だけでなく、インターネット相談も始めている。一部の報道は相談窓口を紹介しているが、まだまだ十分とは言えない。

 今年6月、自殺対策基本法が成立、10月28日に施行された。この法律の成立に中心的な役割を果たしたNPO法人・自殺対策支援センター「ライフリンク」 は、自殺予防フォーラムを9月に主催。実態調査の重要性を指摘した。

 文科省が実施した「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査(届出統計)」 によると、いじめは1985年には15万5066件だったが、徐々に減少し、93年には2万1598件に減った。94年に一旦増加に転じたものの、再び減少傾向が続き、2004年には2万1671件だった。

 しかし、長勢甚遠法相は31日の記者会見で、「(文科省と)統計の取り方が違うかもしれないが、法務省の件数は01年以降増えつつある」と述べた。同省調査によると、「学校側が不適切な対応をした」いじめは、2001年は481件、02年は524件、03年は542件、04年は584件で、05年は716件だった(関連記事)

 さらに、文科省の調査では、99年から05年までの7年で「いじめ自殺」はゼロだった。しかし、毎日新聞は、少なくとも16件あったことを指摘している(関連記事)

 「いじめ自殺」対策には実態調査が欠かせない。警察庁も2007年から、自殺の原因に「いじめ」という項目を入れることにしている。

 加えて、子ども同士の人間関係を調整したり、心理ケアを実施することが必要となる。現場には、専門知識を持つ、独立した第三者が当たるとよいだろう。そして、学校や教委、児童相談所などの関係機関が連絡を取り合う体制をつくり、これをサポートする。場合によっては、警察との連携も視野に入れるべきだろう。いじめはどこでも起きる。 その解決のための仕組みを充実させる方法を考えなければならない。