居場所がなかった!......町の外も家の中も全ての人達が、Jと言うアルコールで狂った(病的人間)に対して、勝手に妄想ばかりが募り、冷ややかな視線で見られてるような気がしてしょうがなかった!
Jが(酩酊状態)の所を(親父)に発見されて翌日!........
Jは(精神科病棟)の一室に身を置いていた!そこは刑務所の(独居房)のような場所で、(鉄格子)が張りめぐらされ、ベットがあり、トイレが部屋の隅に備え付けてあった!所持していた所有物も一切没収され、朽ちた身一つだけが残り、ひたすら点滴の雫が落ちて行くのを眺めてるしかなかった!
(完全なる密室).........
アルコールが抜けきるまで、しばらくの間この状態が続いた!アルコールが抜け出す頃になるとそれは起こった!......体の震え!幻覚!幻聴!この時初めてそれらの体の不調に襲われた!
とにかくこの時は、早くこの(忌まわしい)場所から出たいと言う気持ちと、こんな所にぶち込んだ(両親)達に対する(怒り)でいっぱいだった!今だから言えるが(アルコール依存症)を抱えた患者は、大概この(檻の部屋)に入れられる!それぞれ個人差はあるが、Jのようにブラックアウト(記憶障害)の場合は、錯乱して何をするか分からないからである!中には(奇声)を上げて中から出ようとする患者もいるくらいだ!しかし、この部屋に入った以上常に(ナースルーム)で(モニター)が作動しており、部屋の様子が監視カメラによって24時間体制で看護師が交代しながら、中の様子を監視している為、どう足掻こうともどうにもならないのが現実である!
とにかく最初の2~3日は、まさに生き地獄だった!(まな板の鯉)である!それからしばらくすると、少しずつ(点滴)から(病院食)に変わっていく!また(風呂)に関しての事だが、毎回入ることは出来ず、入浴する際には、看護師が(鍵)を携え、僅かな時間制限の元に入る事を許された!
それから........10日程経過して、いよいよ(大部屋)に移る時がやって来た!
この時点からこの(精神科病棟)に入院している患者達と顔を合わせる事になるのだが、正直(恐怖感)を抱いていた!恐れていた通り、いっせいに(好奇な眼差し)が降り注がれた!
(次はどんな奴が入って来たのか?)..........
むしろ本当の地獄はこの時点からだったかも知れない!この当時の(精神科病棟)にはJぐらいしか、
(アルコール依存症)で入院している患者はいなく、殆んどの患者が(分裂病)や(認知症)あるいは身体になんらかの障害を持った人達が殆んどで、中には(全裸)で廊下を奇声を上げながら駆け抜けて行く患者も居れば、何回も同じ(言葉)を呪文のように繰り返し呟いている患者など、その患者によって様々な症状を持っており、そういった連中と一緒に過ごす事になる!(アルコール依存症)の場合は、(酒)が抜けると一般の健常者と変わらない精神状態に戻る!もう気が狂いそうだった!
夜になると決まって(看護婦さ~ん!おしっこ!)と毎晩のように、(小便)をしたくなる患者と一緒の部屋になり、おちおち眠れもしない!唯一の楽しみと言えば、(大部屋)に移ってからの、(昼)と(夜)1時間の間だけ、タバコが吸えると言う事位だけだった!もちろん自分で所持する事は出来ず、
皆看護師から自分のタバコを受け取り、ライターもこの時間だけ院内に一つだけある物を使用し、皆で奪い合うような状態で、タバコに火を付けていた!もう頭がおかしくなるくらい耐えられなかった!
もう限界だった!次第にこの入院は無意味だと言う事と、とてもここには長く居れないと言う事もあり、(主治医)に退院の許可を求めた!(主治医)に事情を説明した後、(親父)にこの入院の無意味さを語ってもらいどうにか(シャバ)の空気を吸う事が出来た!しかしそれと同時に結局は再び(酒)に走って行く事になる!今更ながらこの当時は、(両親)に命を救ってもらったばかりか、(酒)によって引き起こした問題の(尻拭い)までしてもらったにも関わらず、まったく(有り難味)すら考えておらず、(信頼関係)は最悪だった!いくら(酒)を隠そうが、徹底的に探して(酒)に酔いしれる!
最初はセーブしながら飲むように心がけるが、(一杯飲んだから二杯飲んでも同じだろう!)と脳の記憶が、再び底なしの大酒飲みに変えてしまう!ブレーキの壊れた車のようにひたすら突っ走る!
一旦飲み出すとあたりの事などお構いなしに飲みまくった!(母)が泣こうが、(親父)が怒鳴ろうが、まったく他人事で、(罪悪感)と言うものが完全に欠如していた!
Jのケースは幸いこんな状態にも関わらず(両親達)が最後まで支えてくれたお陰で、最終的に回復の糸口にたどり着くのだが、そうじゃない(依存症者)も現実に今の世の中には多くいて、(孤独)に打ちひしがれて、亡くなっている事もまた事実である! (最後の酒)につづく!