天人五衰 (新潮文庫―豊饒の海)
おススメ度★★★★★

豊穣の海の最終巻ですよ~
本多が見てきた輪廻転生も透という
1人の通信員の少年をもって完結しましたけど
最後に門跡が本多に無を教えたところは人間
そのものが「無」なのか転生自体が「無」
なのか謎の残る終わり方でした。

今回は人間の本質は「悪」であることと衰えは
「人間の肉体」だけではなく「人間の精神」の衰えがある
という事を訴えたかったように思えました。
その訴えを純粋な悪で支配され慶子から透の誇りを否定され
自殺未遂の末精神が衰えた透と、理性に隠された悪を持ち
肉体的に衰え続けた本多で表現し緻密な心情描写や仏教や
ヒンズー教などの世界観を持ちこんだところは凄いと思いました。

「天人五衰」の原稿を入稿した日にあの三島事件が起こったんですよ。
豊穣の海を通じて三島由紀夫の人生を表現したかったのでしょうか。
「奔馬」の本懐を遂げたあとの割腹自殺や「天人五衰」での無は事件を
起こすことを想定して書かれたとしか思えないくらいです。生きていたら
間違いなくノーベル文学賞を取れた作家だけに残念ではありますが、
豊穣の海は一生うち何回読み返しても飽きない作品であることは間違い
ありません!