じつは 去年の 春頃 だったか

 

秋口 だったか、いつもの ように

 

猫ばあ号で お墓の 手入れに


向かって いたところ、リア

 

タイヤの みょうな グリップ感に

 

ふと気が ついて、止まって

 

みると どこぞの くぼみでも

 

踏んだ ときか いつの 間にやら

 

またぞろ パンク したとき

 

みたいに タイヤの 空気が

 

抜けていて、しかも 今回は

 

すぐに それと 気づけずに

 

そんな状態の まま しばらく

 

走って しまった もんだから、

 

こりゃあ まずいって、ほんとは

 

そのあと 給油にも 行きた

 

かったん だけど 安値で

 

なじみの スタンドは そこから

 

わりと 遠かったんで いったん

 

自宅へと もどって しまった

 

もんだから パンクか エア漏れか

 

たしかめ ようにも 拙宅 には

 

自転車 用の 空気入れ

 

しかないし、なにしろ 原付

 

スクーター だから そもそも

 

ホイール なんかが 小さくて、

 

まえにも いち度 ためしては

 

みたんだ けれど 自転車 用の

 

空気入れじゃ あの 先っぽが

 

バルブと ホイール との その

 

せまさに はまって くれなくて。

 

 

 

ガソリンスタンド とかに

 

常備 されて いる やつとか

 

プロ用 なんかの 小型な

 

タイプの 先っぽじゃ ないと

 

どうにも 自宅での 対応は

 

ムリ 臭いしで。

 

 

 

逆に 400cc とか 250cc

 

とかの でっかい バイクなら

 

ホイール 径も デカいから

 

それこそ 自転車用 とかでも

 

ふつーに 空気 入れられて

 

いたんだ けれど、なにしろ

 

もう 田舎の 話で バイク屋

 

なんて とうに 潰れて

 

しまったし、ましてや 原付

 

ともなると 近場の 自転車屋さん

 

とかで その 購買 から 修理、

 

買い替え 廃棄まで 全部

 

やって もらうって 仕組みに

 

町 全体が なって るんだけど、

 

ましてや この ご時世で

 

もうその 自転車屋 さん自体、

 

跡継ぎも いないしで どんどん

 

閉店 して しまって るんで、

 

たかが 原付と いえど もう、

 

機体に なにか あると 八方

 

ふさがりで。

 

 

 

かてて くわえて、

 

 

 

姉貴ん とこに 行ってた うちの

 

ババア、いよいよ あちらでも

 

ウソ吐き 具合いや 悪さが

 

過ぎて けっこう まえに 施設に

 

入れられ ちゃったんで、以降

 

拙宅 からも いくらか その

 

費用を 出しても いるから

 

 

「……修理代 あらへんで?」

 

 

って 早々に ヨメさん からも

 

言われ ちゃってるし、なにしろ

 

 

革の お手入れ‘23

 

 

フル カバードな スクーター

 

タイプ とは いえど、みた目は

 

ともかく 年代 的に 相当

 

ガタの きている バイクな

 

もんだから ヨメ さんの

 

母親、猫 ばーちゃんの 形見の

 

品 とは いえど、タイヤの交換

 

ともども、故障時 とかの

 

面倒 みてくれ そうな いち番

 

近場の お店 なんかを いまさら

 

さがして どうこう するって

 

いうのも おっくう なんで、

 

さすがに もう、方針 的に

 

「廃車」 の 二文字が 浮かんで

 

しまってて、そのうえ しばらく

 

そのまま 置いて おいた

 

もんだから なんと 今度は

 

保険が 切れちゃって、依然

 

ヨメ さんも 無言な ままだし、

 

こりゃあ エンジン かからなく

 

なるまで このまま 放置して、

 

やっぱ そのまま 廃車って

 

コース かなと、自分も、おそらく

 

ヨメ さんも、無言の うちに

 

そう 覚悟 しては いるって

 

ことなん だろうと 思って

 

たんだけど、昨今、バイク

 

事情も また 様がわり

 

しはじめ てるし、2ストは

 

もちろん 50cc クラスまで

 

なくなると なると、それは

 

それで、やっぱ どこか、うちの

 

猫ばあ号 あたり、まだ 死んだと

 

決まって いるわけじゃ ねえし、

 

みたいな、ユーザー 無視して

 

原付廃止 とかって 勝手に

 

決めてんじゃ ねえよ 的な、

 

どこか 反発心 みたいな

 

ものも 生まれて きたりで。

 

 

 

……そういや まだ エンジン、

 

 

 

かかるかな……?

 

 

 

歳 食うと 所有 しては いても

 

諸事情 なんかが しがらみ

 

ついて なぜかしら バイクって

 

なかなか 乗りに 行きづらく

 

なって しまい 250FTで

 

数回、 ゼファーで 1回、それ

 

見こして 単発 小型な TW

 

ならって 乗り換えては みたけど

 

そうなると もう 逆に 何回も

 

キャブ 詰まらせて しまい、

 

その都度 吸気 系の 全掃除

 

している あいだに バッテリーの

 

充電 って あたり までが

 

再度 エンジン かける ための

 

いつもの 前儀式 みたいに

 

なって いたんだ けれど、

 

この 状況で フル カバードな

 

原付 相手に、はたして

 

そこまで やる手間 いるか?

 

とか、正直 そう 思って

 

しまう 部分も たしかに あって。

 

 

 

バッテリーは もう とっくに

 

プア だから、おそらく 電装系

 

なんかは もう ごっそり

 

交換って ことに なっちゃう

 

だろうし。

 

 

 

猫ばあ 号が 止まって 以降

 

いまもう お墓の お手入れは

 

ヨメ さんと ふたりで 全箇所

 

まわるって なかば 習慣

 

みたいに なっては いるから

 

いち応 今後も クルマで

 

行くって ことには なるんだ

 

ろうし、たとえ 無事に 復活

 

させる ことが できたと

 

しても そんな ムリから

 

街中 走るって ことも

 

なくなる とは 思うけど、

 

そもそも Aさん Bさん

 

ヨメさんと へっぽこ さん以外

 

だあれも 乗っては やらない

 

もんだから、いまと なっては

 

死ぬまで バイク乗りで いたいって

 

いう こちらの 意地と、猫

 

ばーちゃんの 形見で あるって

 

点 だけが 唯一 こいつの

 

存在証明 みたいな もの だから、

 

真の 所有者で ある ヨメ

 

さんが もう いいって

 

言い出した 時点で The END

 

って ことに なってく ような

 

気は するんだ けれど、

 

 

 

さあ、

 

 

 

どうする……?

 

 

 

 

「ちょっと 出てくるわ」

 

 

 

 

なにより まず 手近な ところで

 

エンジン 状況の 確認 だろうと

 

キーだけ 持って いつも

 

猫ばあ号 置かせて もらってる

 

姉貴んちの 軒下 行って

 

ブレーキ かけて、スイッチ

 

いれたら ひたすら キック。

 

 

 

やっぱ ガソリン

 

 

 

腐らせ ちゃったかな……。

 

 

 

と、

 

 

 

いやあ、この夏の 暑い 熱波に

 

助け られたか、言っても

 

いまや 留守に なって

 

ひさしい 姉貴んちの 実宅の

 

軒下は 吹き抜けで 常から

 

風とおし よく 日かげと

 

なってて すずしい 場所だから、

 

熱し 過ぎず 寒過ぎず ってな

 

環境下に ずっと いられ

 

ては いたんで、連打 キックで

 

ひと汗 かく まえには エンジン

 

かかり、しかも 案外 スムーズに

 

ぱたぱた いいだして。

 

 

 

……どうせ ならもう ダメモトで

 

タイヤの バルブ ぐいっと

 

強引に 曲げてみて、それで

 

自転車 用の 空気 入れでも

 

エアー 入るか どうか ためして

 

みようか……?

 

 

 

と なったら もう

 

 

 

止まらない。

 

 

 

「ちょっと、やってみるわあ」

 

 

 

いったん 自宅に 戻り ヨメ

 

さんに 声だけ かけて 空気入れ

 

持ち込んで いざ トライ。リア側

 

だから スクーターの 場合は

 

片持ち 機構、いざとも なれば

 

ホイールごと はずして 対応

 

することも 案外 カンタンに

 

できるだ ろうとは 思うけど、

 

とりあえず バルブの 根元を

 

こう グイっと、

 

 

 

……曲がったあ。

 

 

 

ぐにゃり、とまでは いかない

 

けれど なんとか 自転車用

 

空気入れの 先っぽが ハマる

 

程度には すき間が できて。

 

 

 

やった! と 思って なんとか

 

バルブに ねじ込んで みたら

 

 

 

空気 

 

 

 

入るんだ これが。

 

 

 

道中 どこぞの ギャップに

 

乗り上げた その 瞬間に

 

一気に エアーが 抜けたって

 

ことは おそらく タイヤ

 

面の どこかに 穴、もしくは

 

ゴム 自体の 劣化に よる

 

ちょっとした ひび割れ とかが

 

できていて、あらぬ 方向 からの

 

チカラが かかった その 刹那、

 

チューブレス 機構の 内側

 

あたりから そんな 小さい

 

亀裂 なんかが、ひらいて

 

しまったり するんだろう。

 

 

 

乗る。

 

 

 

走る。

 

 

 

とり あえず 大丈夫。

 

 

 

いち応 念の ために 翌日

 

まで 空気 抜けないか どうか

 

みて おいてから ヨメ さんに

 

いく度目 かの 保険 料の

 

直談判。それ までは 休みの日

 

ごとに 週いち 頻度で 責任

 

持って エンジン だけは

 

かけて おくから、ゆくゆくで

 

いいから、猫ばあ 号の

 

保険代、なんとか 都合

 

つけて おくれよと。

 

 

 

「1年でも、ええんやけど……」

 

 

 

けど 保険って

 

 

 

短期だと

 

 

 

お高く なるでしょ?

 

 

「いや、でも、それやと率、もったいないしさあ……」

 

 

やっぱ

 

 

 

ダメかなあ。

 

 

 

じゃあ最悪、自分の 小遣い銭

 

ためて なんとか しようか……。

 

 

 

さらに 翌日。

 

 

 

「はい。コンビニで払ろてきたで」

 

 

 

しかも

 

 

 

 

3年分。

 

 

「いやあ、もう、公道出れるだけ、充分」

 

 

タイヤや 電装系 なんかは

 

また おいおい 考えて

 

いく ことにして 前後の

 

サス系 なんかは まだ無事

 

だから、とりあえず これで

 

道走る ことは できる。

 

 

 

できは するけど

 

 

 

たぶん ウィンカー あたりの

 

リレー なんかはもう

 

 

 

機能 しないはず。

 

 

「裏山の旧道、まっすぐ行って来いするだけやったら、アレらに止められることもないやろ」

 

 

革ジャン とかも ずっと

 

部屋に 吊り下げた まんま

 

だったけど、こりゃ つぎの

 

休みから、また 着込んで

 

やらなきゃ いけないなあ。

 

 

 

 

ちなみに

 

 

 

 

ふたたび 猫ばあ号の エンジンに

 

火の 入った その日は

 

 

 

マッジで

 

 

 

へっぽこ さんの お誕生の 日

 

 

 

だったり する。

 

 

 

 

 

ほんと

 

 

 

 

 

縁は 異なもの

 

 

 

 

 

味なもの。

 

 

 

 

足は バカでも

 

 

 

まあまだ いまだに

 

 

 

バイク乗り って ことで。