386自作ギターアンプ

基板ができたら箱ですが

 

既存の小箱を使うかイチから手作りするか……一応、箱だけでも日本産にこだわってみようかと地元のDIYショップでヒノキやらスギやら桐やらの板材なんかを吟味しつつそれぞれの寸法などもさんざんに見て回ったのだが、入手した各ポットや電源、ヘッドフォンなんかのジャック類などをあらためて確認してみると、穴におさめなければならない組み込み部分の長さが予想以上に短くて、なかには数ミリほどしかないものまで。よもや板材をこの薄さにまで削れる道具なんぞ個人宅になどあるわけがなく、また、そこまでヤスリ掛け、ペーパー掛けしてでも箱材の産地や種類にまでこだわりまくりたいというわけでもなければ、たとえそこまで削れたとしても、今度は肝心の強度がなくなってしまう。いや、可能であれば木製の箱筐体としてぐらいはこだわってみたいのだが、まあ、木材の薄造り加工など無理は目に見えているし、嫁や子供たちから向けられている視線も、そろそろもの言いたげなものに変化してきている。下手の横好き休むに似たり。さしあたって、またぞろ100均店舗にしばらく通うことに。

 

そこで見つけたのが、板材のなかでもMDFとかいう新しい規格の素材。いわゆる合板材らしいのだが、こちらは最新の木工技術であるチップ加圧による板状の製品となっていて、合板ゆえに水気には異様に弱いらしいが、節も筋もなく工作用途としては最適であるうえに、通常の乾燥した状態でさえあれば、ふつうの板材に勝るとも劣らないほどの強度がある。なるほど100均店舗内でもよくよく観察してみると、このMDF素材、知らないうちに、すでにかなりの製品にさえ、ひろく取り入れられている模様。しかし残念ながら、このMDF、当地で売っている加工用の板状のものでいちばん薄い種類のものでも厚さが6ミリほど……。せめて3ミリ厚ほどであったればと店内を探し回ってみたところ、写真立ての商品群で使用されている背板あたりが、どうも皆それくさい。いや、まてよ……?

 

「……写真立てをアンプの表板にそのまんま使っても、意外とかわいいんじゃねえか?」

 

そう。店内で、もうひとつふたつ目ぼしをつけていた小箱なんかもあったことはあったのだが、どうも天板と底板が薄くて組み込むにはすこし心もとないように見えたりしていたためにひとまずパスとしていたところにこれは名案、関係部品のすべてをこの写真立てのMDF板に組み付けてしまいただの音響ケースとしてのみにこれらの小箱を使うのであれば、なんら問題はないはず。もし補強が必要となったにしてもただの空箱であるならば、その加工も容易だし、箱材そのものの変更でさえ、いつでも可能だ。

 

よおっしこれだと我ながらナイスなアイデアとして勇んでそれぞれ購入をした、のだが、……その後に隣町まで出向く機会があり、手近にあったDIYショップをなに気にのぞいてみたところ、3ミリMDF、手ごろな板材としてサイズもそろって、おもくそいっぱい木材棚にならんでおりますがな。……まあ、どうせ板材から切った張った細工したところで微妙に切断ミスとかして失敗し、イビツなひし形気味の小箱ができあがってしまって完成と同時にため息ものでうなだれてしまうに決まっている。決まってはいるが、なんかくやしい気がしないでもない。わざわざ遠地に出向いたときにまで、見るんじゃなかった。

 

ためしに6ミリ厚で作ってみた結果、いつものごとく。……なぜに諸君らは、わずかづーつ微妙に歪む?

穴あけ

曲がりなりにもギターアンプとするからには、スピーカー部分には穴がいる。制作にあたって意外と手こずるのはおそらくここだろうとあらかじめ自在錐なるものを買ってはみたが、電動ドリルすらまともに扱ったことのないドシロウトにも操れるものなのだろうかと不安も少し。先人方々のネット情報を参考にちくちくと調べてみると、スピーカー用の穴に関してはおおむね記事のパターンはふたつ。

 

①スピーカーの径にあわせて一度に大きく円状に切り抜き、布や網目状のものでカバーリングして組み付ける。

 

②取り付ける板材に直接、使用するスピーカーのコーンの範囲程度に2~3ミリほどの穴を順序よくハチの巣状に多数あけておき、そこに組む。

 

このあたりは制作する各人の好みでチョイスすればよさそうなのだが、記事を読むにつけ、みなさんやはり制作中に穴や切断面などが予定の位置から微妙にズレて、その都度ため息ついているらしい(笑)。ああ、自分だけではなかったんだと妙に安心しながらも、どうせため息ものの仕上がりとなるなら一ヶ所で充分との思いから、①を選択。そのカバー材として、嫁さんの隠し手芸材を、少し提供してもらう。もちろん、そんなことをせずともDIYショップなどの園芸コーナーで売っている鉢植え用のネット材とかが使いやすく、安価でいてベストな品ではあるらしいし、一応、ヤフオクなどでもスピーカー用サランネットとかいう名目でホンマモンのスピーカー用カバー材が入手可能であったりしたのだが、これ、どうも格安中古品かなんかのオーディオ用スピーカーからひっぱぐり、単体売りとして出品しているだけのものらしい。なので、そちらを使うおつもりなのであれば、あらかじめ格安で適当なサイズのオーディオスピーカーを買ってスピーカーASSYとして入手した方が、断然お得。いち応、オーディオスピーカーにまるごと「386」をつなげてしまってもちゃんと音は出るのだが、そもそもオーディオ用スピーカーとギター用スピーカーでは制作発想自体が違っており、またそれぞれに相性もあるらしいので、あえて使っても案外いい音を出してくれるものもなかには存在していたりはするものの、よりよいオーディオスピーカーだったりするとウーハーやらツイーターやらと内部にいろいろ付属していて、鳴るには鳴るがとんでもないノイズも発生させたりするものも。そのため、箱もカバーも、まるまるオーディオ用のスピーカーから流用しちまえばラクできるじゃんとは、あまり思わない方がブナン。また実際にやってみると、自在錐と電動ドリルの組み合わせもそれほど使い勝手の悪いものではないとわかってくるし、いざ仕上がった見た目も、なんかギターアンプっぽくて、自分としては、こちらの方が好ましい。ただ、よくよくみてみると、その穴も、これを円状加工と呼んでいいのだろうかと思ってしまうほど、我が細工ながら絶妙なレベルでゆがんでしまったりしているのだが。

 

予算のかけられる状況であれば別途ドリルスタンドなんかを購入したほうがボリュームや電源ジャックなどその他の各電装品の取り付け穴もそれはそれはきれいな仕上がりとなるのだろうが、意地になって手作業でウィンウィンやったあげくシコシコとヤスリでなんとか修正できないものかと密やかに努力するのも、また楽しいっちゃ楽しい作業、である気がしないでもない、のか?

 

……だから、なぜに諸君らは、わずかづーつ微妙に歪むのだね?

スピーカーってやつは

ほかの項目でも取りあげているが、スピーカーからの振動対策として基板の接続搭載には各配線の張力にまかせた、ゆる~いクモの巣状での固定法を選択。しかしこれ、入れ物もスモールサイズであるだけにベストな組み込み手順があることに気づけないと、ハンダを扱いながらの実装作業に、妙に苦労する。まあ、基本どんな順番で組み込んでいっても一向にかまわないことはかまわないのだが、とりあえず「一番最後にスピーカー」を組み付けたほうが、確実にラク。なぜにというと忘れていた事実、スピーカーは、存外強めの磁石を背負ってできている。これがなかなか、小型のものであるとはいえ金属面の多い部品や道具で行う指先まかせの手作業とあっては、げしげし磁力に負けて部品やら道具の先端やらが事あるごとにひっぱられてしまい、意外や何度となく、作業を妨害されてしまう。それが組み付ける部品類やニッパー、ラジペンなどでのことぐらいならまだいいが、コンマ数秒で人体をヤケドさせるほどに熱して使うハンダのコテ先をたびたび磁力に持っていかれてしまうと、いい加減集中力が切れて、ジュッ、と、実害にさえ及んでしまう。まずは磁線のない基板部やその他の部品をクモの巣状となる程度に、ちょうど具合のよさそうな長さに配線付けしてそれらを組み込んでおいて、最後にスピーカーを組みつけて、最終となるスピーカーへのプラスマイナス線をハンダ付けしていよいよ完成といった手順がベスト。ちなみに自分の作った豪華仕様版では、スピーカーアウト部分にむかう手前のヘッドホン端子、その直前の基板~ヘッドフォン端子間に10Ωの抵抗器ひとつを入れております。ピグーノズ改の項目でも触れている細工なのですが、これ、音量調整用。なかには、アウト配線に抵抗器つけるのは熱量的に危険をまねく可能性がある、なんてネット記事も実際ちょいちょい見受けられはするのですが、まあ、基板上にあるかヘッドフォン端子についているかぐらいの違いなら、それほど意味合いは変わらないんじゃねえの? ってな軽い気持ちで、ふつーにセット。実際にテスト弾きしていても抵抗器にまったく熱さは感じないのでとりあえずは大丈夫な範囲なのだろうと納得、そのまま使用し続けています。こちらも、ピグ改と同様不必要と判断できうる住環境であるのなら、つけない方がより出音はgood。ただ、小音量で一日中という制作意図と、ヘッドフォン使用時にすこし音量がありすぎる点を考慮して取り付けたといった程度のもの。ひょっとすると、配線と基板や端子のあいだではなく、配線と配線とで抵抗器をはさみ込む接続方法だったりすると、記事どおり抵抗器周辺の熱量が大きくなるのかもしれませんが、上記の状態のままであれば、特別問題はない模様。まあ、どちらにしても、すべては自己責任の許される範疇で。もっとも、自分の「386」と仔ブタちゃんあらため「ピグ改」くんではいまのところ、一日中を数日間ほどの間隔で続けて鳴らしていても、各種の不具合など、まったく発生しておりません。ふつーに、小音量でいて信じられないほどのすんげーいい音を、ずっーと出しつづけてくれています。

 

ゲイン、ボリュームレベル、トーンの3ポットにギターIN、ヘッドフォン端子、DC電源と電池電源にスピーカー、デカ穴ひとつと中穴むっつと小穴よっつでこの配置。磁石であるスピーカーを先に組み付けてしまうと、線のわずかな向きなどの修正作業が異様にやりづらくなり、最悪「ジュッ」ってなります。

386あれこれ

基本「386」はその部品点数の少なさが示しますとおり、システムとしては信じられないほどチープです。まさしく、ハンダさえ扱うことができれば小学生でも組むことが可能なレベル。なので、ほんと部品のチョイスの仕方などによって敏感に反応してくれて、使用するトーンやボリュームなどのポットの番数や基板で使う電子部品の一個単位レベルでのメーカー変更ぐらいでも、如実に出音が変化します。さしあたって、スピーカーの種類や大きさ、ゲインやボリュームポットの番数などは微妙な相関関係で相互に影響し合っているようなので、それぞれ種類違いや番数違い、メーカー違いなどをあらかじめ複数個用意しておいてじっくり試してみるなどしても、ギター好きならば、相当面白い経験となることうけ合いです。上記で自分はスピーカー(ヘッドフォン)まえに抵抗器をつなげて音量を調整している旨お伝えしましたが、10Ωや47Ω、470Ωと、むろんこの、抵抗器の番数をかえたり外したりするだけで、音量も音質も、がらりと様変わりをしてくれます。もっとも、音量調整用の抵抗器はこれ以上番数を上げると悪い方に音質変化してしまう(ハリや音量などがなくなる)ことはすでに確認しましたので、お試しになるのであれば、それぞれそれ以下の番数を選ぶか、とりあえずハズしたまま、いち度テスト弾きしてみることをおすすめしたいところ。あとは、つなげるスピーカーのサイズや、個々の性能次第。径が小さければ否応なくより歪み量も増加していきますし、大きければ大きいサイズになるほど、クリーン傾向となります。また自分は、こちらの「386アンプ」のほうでもピグノーズ形式にならって基本的には密閉式となる筐体スタイルを選択している結果となるわけなのですが、これがまた、すき間をすこし開けてプレイするだけで、仔ブタちゃんよろしくハイの出方ががらりと変わります。理屈とかは「ピグノーズアンプってなに……?」の「そもそもピグノーズ」あたりにもあげてありますので重複は避けますが、面白いのは、材質などはまったく違うはずなのに密閉状態で弾いてみるとしっかりピグノーズっぽいくぐもった音質をしているのに、あけてドライブさせてみると、心臓部が386だけに、出音が完っっ全にスモーキーに(笑)。なるほどこれは外装を金属製にしてみたりしても面白そうだし、通常使用されるであろうスピーカーの径などからも、どちらかといえば「386アンプ」、こちらはやはり、クリーンよりもドライブサウンドがメインかなー、パワーのあるPUだとボリューム上げるだけでわりと歪んじゃうしなー、なんて思っていたのですが、豪華仕様として組み入れた端子のひとつ、ヘッドフォンを通して使ってみると、なんとこれが「386」でも出音一転、まさしくローランドの名機ジャズコのごとく、すさまじいほどのクリーンサウンドが、しかも、けっこうな音量で。これは大きく予想外。というか、もう、想像の範囲を超えてしまっているほど。「386」にヘッドフォン。これ、制作の際にはぜひとも、ぜひともお試しのほどを。ほんと、びっくりしますよ。ハムもシングルも、テレキャスもレスポールもおかまいなし。さすがに、というか、仔ブタにヘッドフォン端子を付けたとき同様なるほど箱鳴り感はいっさい消えてはしまうのですが、その音質はまぎれもなくクリーン中のクリーン。そう、シロートにも容易に組めるほどドシンプルな基板でいて5インチクラスほどの径をもったスピーカーを使用さえすれば、ひと昔前の安価な箱ものギターをも見事に解析してしまう「386」の異様な出音のよさや真空管アンプなみの際立った音質などの不可解なナゾは、このIC自体の持つ、並はずれた音像解析力にあったというわけなのですね。ヘッドフォン……この音色がなぜ小型のスピーカーを通すとなると素直に出てくれないのかがわりとくやしいのですが、……うん? 待てよ? とすると……。

 

386バージョンⅡ。こちら、まさしく小型ピグノーズとしての仕様をねらったもの。本文にもあげました通りこちらの¥100箱では上下板の厚みが足りずかなりヤグそうに思えたものの、共鳴箱としてなら充分使えましたし、自在錐も購入したところでしたのでとりあえず穴あけて組み付けを。と、これだけのことでもバージョンⅠとあきらかな音質差が出て、都合2台持ちとなったいま、その時の気分によって使い分けたりしています。歪みもクリーンもヘッドフォンからも、それぞれともにいい音で、これがまたかわいいの。

 

 

 

まあ、ひとまず目標は達成できたことでもあるし、「386ギターアンプ」の作成としてはいったん、ここらで仕上がりとしました。仕上がりとはしましたが、あのヘッドフォンからの音質がやはり、……う~ん。

 

 

どうせなら、ちっこくてギターの弦波長と相性のいいスピーカーとか、薄手でいてがっちり造られている木材製の小さい箱とかって、たぶん、まだどっかにあるんじゃないかな~、なんて日々がまた(笑)。

 

 

 

 

※へっぽこさんのSNS初出品となる利用ホームページ「Ameba Ownd」が今季をもって急遽仕様を変更し、データ量の減少とページ枠の現象から無料公開分は縮小限定となるとのことですので、その内容だけ、まるっとこちらのブログページへと移植させていただきました。

 

まったく、困ったもんだ。

 

7/11