硬膜外麻酔の準備を始めた麻酔科医。

独り言なのか、手順をひとつずつ確認しているのかわからないぐらいのボソボソ声が聞こえてくる。


横になり背中を丸めて、身を任せる。

どうやら刺す場所を決めているみたいだが、背中の真ん中やら上の方やら、背骨をコリコリ触られた。

加えて、エコーで見ているらしい。


この間、麻酔科医は相変わらずボソボソと何か言っているが聞き取れず。

そんな中、ずっと私のことを気にかけてくれていたのは、左側に立っていた看護師だった。

身体にかけられた布の上から、手を添えてくれていて、麻酔科医の代わりに今、何が行われているかをずっと說明してくれた。


やっと場所が決まり、局所麻酔が打たれた後に太い針を刺すという。

事前の說明では、痛かったら「痛い」と声を出してくれと言われていた。動くと危ないからと。


看:今から管を入れていきますね

私:(うなずく)


激痛が走り、一瞬「うっ」と声を出したところで看護師が「痛いですか?」と聞いてくれたのでうなずいた。


看:先生、痛いそうです

麻:無言

看:麻酔、追加しますね

私:(うなずく)


このやり取りが2回。局所麻酔を追加している間、麻酔科医の声は、私はには聞こえなかった。


看:大丈夫ですか?

私:(うなずく)

麻:入れていきますね〜


と聞こえたところで、血圧低下を知らせるアラームが鳴り響いた。

テレビでよく聞く音だな〜と思った瞬間、手術室がバタついたのがわかった。


(おそらく助手の)男性:先生、血圧が60です!

麻:あ〜

男性:薬、用意しますか?

麻:あ〜、じゃあ〇〇とか…

男性:とか!?、しっかり指示してください!


おいおい、私、まだ意識ありますけど?

頼むから不安にさせないで欲しい。


何かの薬を投与されて電子音は聞こえなくなったが、身体全体が汗ばんでいるのがわかった。

ずっと目をギュッと閉じていた私に、男性助手が「大丈夫ですか?一旦、目を開けられますか?」と問いかける。


恐る恐る目を開けると

「大丈夫ですか?汗、拭きますね」

「緊張もしてるから、血圧が下がりましたね。気持ち悪くないですか?」

うなずくのがやっとの私だったが、麻酔科医もたいがいだが、お前もな!と心の中で毒ついていた。


看:次は細い管を入れていきますからね。

 ちょっと、ゾワゾワとしますよ


の、声掛け通り、背中の中を何かが動くのを感じた。

うわ、気持ち悪!


看:最初の管を抜いていきますね。


痛みはなく、ようやく終わった(手術は始まっていないのだが)とホッとしたのに、


麻:抜きすぎちゃった

私:(は!?何を?)

麻:もう1回、入れますね?

私:(おいおい、ホントに大丈夫か?)


なんと、やり直しが行われたのだった。