この日は朝食から流動食が開始された。
起床して、鈍い痛みと寝不足に耐えていたのに、いきなり飲まされたのが、食前の漢方薬だった。
苦いわ、量は多いわ、何の薬かもわからないわで、少々パニック。
飲み込みもうまくいかず、少しムセたせいで後々痰に苦しめられることになる。
朝食の流動食は2割程度しか口にできなかった。
午後になり、ベッドに腰掛けた状態で温かいタオルで身体を拭いてもらい、さっぱりできた。
間髪いれず、今日の目標はフロア1周ですと通告される。
まずは立ち上がることからだが、看護師は「事前に言っときますけど、立ち上がる時に激痛が走ります」とにこやかに言う。
えっと思ったが、考える間も与えないのは経験からくるワザなのか?
脇を抱えられ、1.2.3の合図でベッドから立ち上がると、息もできないほどの激痛だった。
息を吐くことでなんとか痛みをごまかし、恐る恐る足を踏み出した。
一歩一歩、進むたびに痛みがあるが、立ち上がったときの激痛と比べれば、マシなほうだった。
何とか5メートル先の病室のドアまで進んだが、ここでクラクラとしてきた。
手をとっていた看護師が、指先の冷たさと顔色の悪さから「痛いですか?それともフワフワしますか?」と聞いてきたので、フワフワすると答えたところベッドまでUターンとなった。
血圧を計ると80しかないため、この日はフロアデビューはお預けとなった。
この時は、結構スパルタだなぁと戦々恐々としていたのだか、今思えば、この初めの一歩がなければ離床もいろんな管からの解放もなかったわけだから、担当看護師には感謝しかない。