高野栄治です。


NBAには嘘でしょ?と目を疑うようなニュースが飛び出す日があります。それがトレードデッドライン(移籍期限最終日)当日。
 

この日を過ぎるとシーズン中のトレードが不可になるとあって、各チーム、大型トレードの決定が集中するんです。


今年のデッドライン、2月10日もとんでもないトレードが成立してしまいました。

 

ネッツもシクサーズも、NBAチャンピオンを狙う強豪チーム。


レギュラーシーズンも後半戦に入って、どのチームもここで不安材料を払拭し、プレイオフに向けて勢いをつけたいはずですが、まさかの主力メンバー交換が成立してしまった。


これはとんでもなく大きな賭けです。


僅か5人で攻守全てが完結するバスケットボールにおいて、レギュラーメンバーを、それも今回のようにオールスター級のスター選手を入れ替えるというのは、チームを根本から再構築するということ。


チームを熟成させる期間もほとんど残されていないシーズン後半に、それをするというのは相応の理由があります。


では何故両チームは超大型トレードに踏み切ったのか?


実はネッツもシクサーズも、シーズン当初からそれぞれ大きな問題を抱えていました。


両チームは結局のところ、決断を迫られるシーズン終盤まで、それを解決することができませんでした。


その2つとは、シクサーズの『ベン・シモンズ問題』と、ネッツの『カイリー・アービングのワクチン未接種』です。


ベン・シモンズ問題は、一言で言えばベン・シモンズのシクサーズへの不信を原因とする試合のボイコットです。


詳細については色々な記事があるのでそちらを参照ください。

 

まだ若いベン・シモンズ、実力は既にオールスターガードとして申し分ないだけに、シクサーズも中途半端な対抗馬ではトレードできず、状況は混迷を極めていました。


一方、ネッツは、カイリー・アービングがワクチン未接種であるがゆえに、ニューヨーク市の条例に基づきホームゲームに参加できないことに悩まされ続けてきました。


シーズンが進むうちにパンデミックが収まって条例が緩和されることを期待していたのかもしれませんが、状況は皆様もご存じの通り。

 

もちろんワクチン接種の解釈は人それぞれ。


ただ結果として、カイリー・アービングは今季の試合の半分を欠場することが確実視されています。


ケビン・デュラント、ジェームズ・ハーデンとともにネッツの”BIG3”を形成するスーパースターのカイリーですが、肝心な時にコートにいるかわからないと考えると…微妙。


試合に出さえしてくれれば本当に最高なのに。残念ですよね。カイリー。


【カイリーアービング】彼が天才と言われ続ける理由がわかる三分間 スーパープレイ集

そこに不満を持ったのが、今回トレードの対象となる、ジェームズ・ハーデンです。


シーズン得点王に3度(!)輝き史上最高のシューティングガードの一人とみなされながらも、チャンピオンになる機会に恵まれていないハーデンは、誰よりもチャンピオンへのモチベーションが高いです。


ロケッツ時代、チャンピオン争いに絡めそうにないチーム事情にやる気をなくし、ぽっちゃり化した(笑)と話題になっていましたが、強豪ネッツへの移籍決定した途端体型も元通りになるほど。

 

しかしネッツはシーズン当初こそリーグトップを快走したものの、依然ホームゲームに出場しないカイリー、デュラントやハーデンも前半のハードワークの影響か負傷離脱しておりここに来て急ブレーキ。


折角チャンピオンリングを求めてネッツにやってきたのに、雲行きが怪しくなってきました。


一方、隣の芝生であるシクサーズでは怪物ジョエル・エンピードがMVP級の大暴れをしています。


誰よりも結果を求めるハーデンが、「ああ、自分、シクサーズに行ったほうが活躍できるかもな…」と思ってもおかしくないでしょう。

 

と、いうわけで、突然成立した超大型トレードですが、結果をみると両チームにとってはメリットのある良いトレードだったのではないでしょうか。


シクサーズにとって試合に出ないベン・シモンズは不良債権化していたわけで、ハーデンの加入により一気にチャンピオンが現実味を帯びてきました。


ネッツにとってもハーデン離脱は痛いですが、やる気をなくしてまたぽっちゃり化されるよりは、カイリー不在時のガードを任せられ、ネッツが比較的苦手とするディフェンスにも定評のあるベン・シモンズはチームの総合力に寄与するでしょう。


チームを再構築するリスクをとったとは言え、コート上に立つ5人がハマればチャンピオンになる可能性が生まれるバスケだからこそ、問題に対処した両チームが今後どんな結果をたどるか、目が離せませんね。


ああ、プレイオフが待ち遠しい!


まとめ

 

まさかの超大型トレードも、両チームの抱える事情を考えて納得。


だからNBAは面白いし、目が離せない。


記:高野栄治(こうのえいじ 物書き志望のブロガー。NBA、MLBなどスポーツ関連の記事を中心にお届けします)