天声虫語 | マイノリティ・リポート

天声虫語

むかしむかし、あるところに海外の鳴き声コンクールで優勝した盲目のセミがいました。授賞式の次の日セミは帰国しましたが、家に帰るまでの道中で迷子になりました。

山の中で、セミは一軒の家を見つけました。それは労働者のアリの家でした。
セミはアリにこう言いました。

「私は海外の鳴き声コンクールで優勝した盲目のセミです。道に迷ったので今晩泊めていただけませんか?」

アリはセミに言いました。

「あなたは金持ちの家に生まれ、親の愛情を受け、自分がしたいことだけをしてきました。そして自分がしたかった事をしてコンクールで優勝しました。僕はずっと絵描きになりたかったけれど、誰も僕の絵を認めてくれませんでしたし、誰も僕の事を絵描きだとは思っていませんでした。僕はずっとあなたの友達に食い物にされ、こき使われて生きてきました。僕にはあなたの頼みを断る権利がある。お引取り下さい」

それからまもなく、盲目のセミは成虫になって一週間たったので死にました。

すると、アリとセミとのやり取りを見ていたチョウがアリにこう言いました。
「せめて畳の上で死なせてやればよかったのに。お前はなんて残酷なんだ」

上から目線のチョウの話し方に怒ったアリは、チョウの背中に素早く回り込み、チョウの羽をぜんぶ噛み切りました。そして、悶えるチョウの身体を渓谷まで運び、谷底に突き落としました。

「飛べるものなら飛んでみな」

谷底から、べちっと言う音が聞こえてアリが見下ろしてみると、チョウが尻から変なものを出して死んでいました。

アリは思いました。

「チョウは、甘い汁を吸うばかりで、自分は何もしないくせに勝手な事ばかり言っていた。僕がしなくて良い苦労をしている姿を見て笑っていた。あの盲目のセミの事も見ていただけだったし、セミを自分の家に入れてやろうともせず、セミが死ぬと僕を非難しはじめた。あいつは虫の風上にも置けない。ウジ虫以下だ。チョウはまるで有名大学出身のマスコミ関係者や役人官僚のようだった」

その後、いままで必死に働いても報われてこなかったアリは、ひょんなことから不労所得を得て生活に余裕が出来、家庭を持って、のんびりと好きな絵を描きながら幸せに暮らしました。

めでたしめでたし。