話は前後しますが、どこかのタイミングで真治とのことは家族に伝えておく必要があると、ずっと私は考えていました。

そのタイミングは、ちょうど弟の結婚式があった年に帰省した時がちょうどいいだろうと思いました。

弁護士さんと電話で打ち合わせをして、面談を待っていた期間中のことです。

 

両親と私でお酒を飲みながら話をしていた時に、唐突に真治の話を持ち出したんです。

もちろん両親は天地がひっくり返るほどの驚きを見せましたが、父と母では反応に若干の温度差がみられました。

母は比較的冷静に話を受け止めていたようですが、父は激怒しました。

 

それも仕方がないことかと思います。

なにしろ自分の身内がしでかした不始末ですから。

「おまえは何を企んでいるんだ?」

「弟の結婚式のおめでたい席をぶち壊しに来たのか?」

父は怒鳴り、母はなだめにかかりましたが、話は平行線に終わりそうだと思ったので、「じゃ、私、明日の朝、帰るわ。結婚式には出ない」と言い捨てて2階へ上がってしまいました。

 

2階では康雄さんと息子が高いびきで寝ていました。

しばらくその寝顔を眺めていると、母が会談を昇って来て「実草ちゃん、怒らないで。落ち着いてもうちょっとちゃんとお話を聞かせて」と言いました。

 

渋々リビングに戻ると、父も少しバツが悪そうな顔をしていました。

「それで、おまえ、裁判を起こすつもりなのか?」
「そう、もう弁護士さんも依頼してある」

「裁判はお金がかかるんだぞ、あるのか?」

「裁判費用の立て替え制度って言うのがあって、それが利用できるの」

「弟には話したのか?」

「まだよ、次に帰って来た時に言う」
そんなやり取りをしましたが、父はあくまで渋い顔でした。

おそらく真治が養子になった伯父に気を遣っていたんだと思います。

 

数日後家族で温泉に行ったんですけれど、母と人の気配がない露天風呂に入った時に、急に母は「実草ちゃん、真治さんのことは本当なんでしょ?」と言いました。

「当たり前でしょ」

「お母さんは裁判起こすのは賛成よ。たくさん慰謝料取ってやりなさい」と言いました。

 

両親の反応には温度差がありましたが、私もすでに引き返せないところに来ていたので、誰がなんと言っても前へ進むしかありませんでした。

 

 

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