タクシーを降りホテルへ。
ガチャリと鍵を開けて部屋に入る。
あらためて見ると、なんだか修学旅行で泊まった旅館を思い出した。
飾ってある人形に罪はないのだが、夜中にひとりぼっちだとホラーを感じる方もいるだろう。
繰り返すがお人形さんに罪はない。
そして黒電話。アンティークだ。
でも、夜中に突然鳴るとこれもホラー指数は高いだろう。
でもこの雰囲気がノスタルジックでとてもいいのである。
もちろん何事もなくぐっすり眠ることができた。
朝、とりあえずシャワーを浴びようと浴室へ。
日曜日って感じの町の様子が丸見えだ。
今まで生きてきた経験値で、お湯と水のハンドルをひねり、ちょうどいい温度を待つ。
待つ。
待つ。
待つ。
ま...。
一向にお湯が出ない。
水が出るハンドルを締めお湯のほうをマックスにひねりあげる。
だが、出ない。
お湯は出ないのである。
お湯が出ないことを奥さんに伝えると、もしかしたら給湯のスイッチがあるかもと、もう一度部屋をチェックするが、そんなものはない。
僕は「諦める」という勇気を振り絞り、そのシャワーに身を投じた。
「うぅぅぅ はぅっ」
止まりそうになる心臓を叩きながら必死に耐える。
しかし人間とは丈夫なもので、しばらくすると慣れてきて、シャワーから出てくる水の遠くに温もりすら感じるほどになるからすごい。
シャワーを終え、バスタオルで身体を拭き、しばらくするとポカポカしてきた。
これは勇者のみ味わえるご褒美タイムかもしれない。
さあ次は奥さんの番だ。
僕と違って冷静な奥さんは、インフォメーションブックに目を通し始めた。
そしてある文章を発見する。
「お湯が出ないときは蛇口側にレバーを下げ、お湯全開で3分出しっぱなしにしてください。ボイラー君が眠たい目をこすりながらお湯を沸かします」
と記してある。しかも蛍光イエローでラインまで引いてあるのだ。
奥さんは勝利を確信し、その文面通り行動し、3分間待つ。
そろそろかな!と浴室を開けると、湯気ゼロである。
それどころか、遠くに感じられたほのかな温もりも消失、たんなる冷水になってしまったのだ。
もう一度文章に目を通すと、
「23時以降はボイラーが停止し、お湯が出ません」
と、なんのマークもなく記されていた。
ここにマーカーだろ!と独り言をつぶやき、奥さんは浴室へと消えていった。
「キャア〜〜〜っ」
朝なのにホラーな叫び声が響き渡る。
当然だ、11月中旬なのである。
そしてチェックアウト。
チェックインの時に聞いていたが、「明日は午後4時まで誰もいません」と。
鍵をフロントに置いて帰るシステムなのだ。
いろいろと驚きを散りばめたホテルだったけど、これぞ旅の思い出!一生忘れることはないだろう。
エントランスを出て、写真を撮りながら奥さんがつぶやく。
「See you....アゲインは言えないな〜」
楽しい旅路であった。








