ようこそ、ミュゼ・デュ・プズルへ。

お客様、当館は初めてでいらっしゃいますか?

左様ですか、かしこまりました。

いえいえ、初めての方であっても何の問題もありません、ご心配なく。





「ミュゼ・デュ・プズル」の意味、でございますか?

はは、お客様、失礼ながらフランス語にはあまり明るくない御様子。

正しくは「Musee du puzzle」。

つまり「パズルの美術館」、とでも申しましょうか。

ご存知のように、当館では主に所蔵しているジグソーパズルの公開を行っております。

ええそうです、全て私の父により手がけられた作品です。

お客様、なかなかお詳しいですね。

ああ、パンフレットで見た、それはそれは、誠にありがとうございます。






さあ、それではお客様も、そこのお連れの方も、そろそろ館内に入りましょう。

申し遅れました。

私、僭越ながら本日の案内役を務めさせていただきます「桜水」と申します。

・・・チビ?

はは、お客様、御子息はなかなかユーモアに富んでいらっしゃる(・・・チッ)








さあ、ではどうぞお入りください。

本日は当館所蔵の作品の中から、最新の4品を鑑賞していただきます。

あ、こらこらボク。

あんまりおじさんの袖を引っ張るものじゃないよ。

はは、いやしかし、実に腕白な御子息でいらっしゃいますな。

ああ、こらこら、あまり館内を走り回らないように、はは(・・・チッ)






さて、お客様。

まず見えてきましたのが、3000pの大作『バベルの塔』でございます。

はい、そうです。

数ヶ月前に、当美術館の方で「まもなく完成」と告知させていただいた、あの作品でございます。

作者も非常に満足のいく出来だったようで、

ご覧のように先行公開と相成った次第でありまして、はい。





お客様。

今回は特別に、完成に至るまでの過程をお見せいたしましょうか。

ええ、構いませんとも。

特別ですよ、ふふふ。









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こちらが作成初期のもの。

そう、告知したときに掲載したお写真が、まさにこちらでございます。







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そして、こちらが作成中期のもの。

メインのモチーフである「塔」の輪郭が、次第に、こう、浮き上がって。

全体像が見えてきた時期、とでも申しましょうか。






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そして、完成直後でございます。

実際には、この後、劣化防止のために、表面に透明のフィルム板を被せることになります。

そうそう、今まさにお客様がご覧になっている作品にも施されておりますね。

さあ、それでは改めて作品をご覧頂きましょう。






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どうです、見事なものでしょう。

何、先程の物の方が、鮮明で良かった?

申し訳ございません。

お客様のご指摘、誠にごもっともなのですが、

被せてあるフィルム板の特性上、光を反射してしまい、作品が見えにくくなります。

故に、撮影時は当館をこのように薄暗くしなければならない次第でありまして。

はは、確かにフィルム板を一度取り外せば済む話でございますね。

しかし、この板、一度取り外すと、再び取り付けるのが非常に面倒なのでございます。

何卒、ご容赦くださいませ。





どうです、奥様。

・・・それはそれは、誠にありがとうございます。

そう言って頂けると、作者も大変喜ぶことでしょう。

ええ、横幅は約1.2mという大きさですからね、なかなかお目にかかr

こらこら、ボク、出来れば直接触れないでもらえるかな。

フィルムが付いてるんだから平気だろ、って?

はは、お客様、御子息は実に賢くていらっしゃる(この・・・)







さて、それではこのホールを出まして、「吹き抜けの間」に参りましょう。

左様ですね、当館の目玉とも言って良い作品をご覧にいれます。

さあ、こちらです。





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2000p、『神の摂理』でございます。

は、それでは説明を始めさせていただきます。

正しくは、『教皇ウルバヌス8世治下の神の摂理の勝利』と申します。

原画を描きましたのは、かのピエトロ・ダ・コルトーナ。

バロック期のイタリアを代表する画家でございます。

元になっております天井画は、それはもう見事な物でございまして。




本作品も、このように1階と2階とを繋ぐ「吹き抜けの間」に展示されまして、

当館を代表する作品となっております。

・・・本当にパズルなのか、ですって?

はは、なかなか面白いことをおっしゃる。

どうぞ、近くまで寄ってご覧ください。





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はは、どうです、本物でございましょう?

当館ミュゼ・デュ・プジョ・・・もとい、プズルを代表する作品、ご堪能頂けましたか?

いえ、噛んでなどおりません、おりませんとも。





あ、こら、ボク。

その手すりのお人形も作品だから、あんまり乱暴に扱っちゃ・・・




あ・・・




いえいえ、お客様、ご心配なさらずに、どうか頭をお上げください。

とんでもない、修理代など結構でございます。

いえいえ、本当に結構でございますから、

はは、どうぞ気になさらずに、頭をお上げください(ギリッギリッ)







さ、さあ、それでは気を取り直して、次の「廊下の間」に・・・

奥様、もう十分でございますから、どうぞ頭をお上げください。

では、「廊下の間」にご案内いたします、どうぞこちらへ。









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作者、中期の傑作、『タルソスに上陸するクレオパトラ』でございます。

規模は2000p、原画を描きましたのはロランという、これまた著名な画家でありまして。

相変わらず照明が暗い件に関しましては、ご容赦くださませ。

ええ、先程申し上げました光の反射の関係でございまして、はい。






は、クレオパトラはどこに、でございますか。

そうでございますね、はい。

・・・いえいえ、勿論私は承知しております。

では、作品に近寄っていただきまして。





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この中のいずれかが、クレオパトラでございます。

誰がそうであるか、お客様の推理力の見せ所ですな、はは。

・・・いえいえ、先程も申し上げましたように、

私はどれがクレオパトラその人であるか、把握しております。

分からないなどということはありません、ありませんとも(ギク)










さあ、最後のお部屋へ参りましょう。

ん、どうしたの、ボク。

ああ、成程、本当はポケットモンスターの映画を観に行くはずだったのか。

それは残念だったね。

でも、どうだい、パズルもこうして見ると、なかなか良い物だろう?

はは、そうかそうか、やっぱり子供にはつまらないよね。

そうかい、君でも作れる物ばっかりか、そうかそうか、はは。

凄いね、ボクは本当に賢い子なんだな、はは(ビキビキ)






さて、それでは改めまして最後のお部屋でございます。

この部屋は「作者の間」。

そう、当館の作品を全て手がけている作者のお部屋でございます。




生憎と、本日作者は不在でございますが、

あちらの作業台をご覧ください。

現在製作中の作品である、3000pの大作『ナポレオン1世の戴冠式』でございます。





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おお、お客様、実にお詳しい。

そうです、本作品は、数年前作者が一度手がけていた物でありますが、

がさつな夫人の行為により、ピースの一部が失われ、

作者の作品の中で唯一「未完」とされた、いわば幻の作品でございました。





しかし、現代は実に便利なものでございまして、

何と言いましたか、パソコンを使って売買をする、そうそれ、ネットショッピング。

そちらでもって、素材を再び買い戻され、こうして現在に至る訳であります。





このペースで行けば、そうでございますね。

今年の11月頃にお越し頂ければ、完成した物をお見せできるかと思います。

・・・どうされました、奥様。

はは、そんな恐縮なさらずに、どうぞどうぞ、近くまで寄ってご鑑賞ください。





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どうです、実に繊細な作業でありましょう。

まだ未完成ではございますが、

右手に微かに見えます冠を掲げた人物が、作品の主題であるナポレオン、

そして左手、ひざまずく美しい女性が、皇后ジョセフィーヌでございます。





本来、皇帝となった人物は、教皇より冠を頂くのが慣わしでございますけれど、

ナポレオンは自ら冠を頂き、そして戴冠を請う奥様にも直接冠を授けることで、

御自身の権威を誇示しようとされたのですな。

まさに、本作品はその場面でございます。




いやいや、拍手など勿体ない。

案内役の、ただのうんちくでございますから。











さて、ではこちらへ。

お疲れ様でございました、本日の鑑賞は以上でございます。

何かご感想や、お気づきの点などあれば遠慮なくお申し付けください。





あ、ボク。

・・・もう御車に乗り込んでしまったようで、

御子息には、多少退屈だったかもしれませんね、はは(・・・チッ)





何か、ご意見などは、よろしいですか。

かしこまりました。

それでは、本日は当館ミュゼ・デョ・・・

もとい、ミュゼ・デュ・プズルにお越しいただき、誠にありがとうございました。





お帰りもどうぞお気をつけて。

またのご来館をお待ちしております。

いえ、噛んでなどおりません、おりませんとも。