俳諧伝授 -10ページ目

木のはしの歌仙(泰里編『五畳敷』明和六年)

 木のはしの歌仙(泰里編『五畳敷』明和六年)


木のはし(端)の坊主のはしや鉢たたき      蕪村
 始て法(のり)の道を踏む霜          泰里
浅く汲む水の柄杓(ひしゃく)のなら(習)はしに  太祇
 持(もち)くさらしの台子(だいす)なりけり   図大
さす月のためにもあらず蔵の窓         五雲
 みだるる方が萩の見どころ          執筆


ふらふらと秋を出歩くお大名           里
 親孝行の家の日あたり             村
首玉に一際(ひときは)猫の愛(あい)増(ま)して   大
 枕たてつつ来ぬ夜恨(うらむ)る         雲
手に繰(く)りて疾(と)く見る文ぞはしたなき    祇
 まだ陸奥(みちのく)は軍(いくさ)最中      里
ありがたや十日の雨に田植(たうえ)して      村
 諸肌(もろはだ)脱(ぬぎ)に涼(すずみ)とる月   大
椽(えん)先に干(ほし)わすれたる山帰来      雲
 相傘(あいがさ)ねたき仇書(あだがき)のさま   祇
花嫁と和子(わこ)が成りし歟(か)ても扨(さて)も  里
 そなたの空や春の行方(ゆくかた)        村

名残の表
かかる野にとがとがしきは雉子(きじ)の声     大
 すは御(おん)大事から尻(じり)に医者      雲
蝋燭(ろうそく)の漸く灯(とも)る明(あか)りさし  祇
 酉(とり)の下刻(げこく)は寒の入(いり)也    里
あざなへる縄のごとしと口ずさみ         村
 灘(なだ)行(ゆく)船の風のまにまに      嘯山
打切(うちきっ)た死骸どんぶり投込(なげこみ)て  山
 恋ならなくに東雲(しののめ)の人        大
祈るにもあやにく遠き神やしろ          祇
 尾花のしら髪(が)山にばらける         山
鼻唄(はなうた)も一ふし月の武者執(修)行    村
 夢みたやうにさめるどび漉(ろく)        雲

名残の裏
居(すえ)風呂のあまりぬるさに風引(ひき)て    里
 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏           山
人買の伸(の)びも欠(あく)びも憎気(にくげ)也   大
 洗濯ものを潜(くぐ)る近道           村
土佐(とさ)駒(ごま)を飼(かひ)給へかし花の頃   山
 三月(やよひ)になつて凧(たこ)あげる風     祇