歌仙 市中はの巻(4)
13 立かゝり屏風を倒す女子共 兆
|たちかかり○○|びょうぶをたおす|おなごども○○|
雑の句です。
11 魚の骨しはぶる迄の老を見て
12 待人入れし小御門の鎰
から、
13 立かゝり屏風を倒す女子共
12 待人入れし小御門の鎰
へ。
「立かゝり」は、立ち上がってよりかかる。
待ち人を密かに迎え入れた主人、その待ち人の君を屏風の蔭からひとめ覗き見しようとして使用人の女性たちは屏風によりかかり倒してしまった。
これは12番の句に素直に付ければ、11・12番からの変化はたやすいですよね。
まあ、使用人の女性にとってみれば主人の彼氏がどんな人なのか、気になるところではあります。
11番の句から(12番の句を共有しての)13番の変化、面白いですよね。
恋の句の余韻も、たしかに鳴り響いています。
14 湯殿は竹の簀子侘びしき 蕉
|ゆどのはたけの|すのこわびしき|
雑の句です。
13 立かゝり屏風を倒す女子共
12 待人入れし小御門の鎰
から、
13 立かゝり屏風を倒す女子共
14 湯殿は竹の簀子侘びしき
へ。
立ちかかって屏風を倒すような不作法な女中の居る宿、一人湯殿の簀の子の上で身体を洗う我が身の侘びしいことよ.。
この「湯殿」は、旅の宿の風呂場なんでしょうね。
ちょっと世をスネたような旅人のニヒルな「侘しき」なんでしょう。
15 茴香の実を吹落す夕嵐 来
|ういきょうの○○|みをふきおとす|ゆうあらし○○|
季は「茴香の実」で秋。
13 立かゝり屏風を倒す女子共
14 湯殿は竹の簀子侘びしき
から、
15 茴香の実を吹落す夕嵐
14 湯殿は竹の簀子侘びしき
へ。
「茴香の実」は、生薬として風邪薬とか胃薬に使われますよね。
日の落ちた屋外では庭に実った茴香の実を吹き落とす勢いで強風が吹き荒れている、その音を聞きながら湯に浸かっていると敷いてある竹の簀の子さえ侘びしく思える。
去来さん、人事句がずっと続いていることに気づいて、叙景句を付けたんですねぇ。
13・14番と15・14番、両者ともに「簀子侘びしき」となげく人物の描写なのですが、明らかに性格の違いが出てきていますよね。
前者が「ちょっと世をスネたようなニヒルな旅人」だとすると後者は「繊細な感受性を持った風流な旅人」でしょうか。
16 僧やゝさむく寺にかへるか 兆
|そうややさむく|てらにかえるか|
季は「やゝさむ(やや寒)」で秋。
15 茴香の実を吹落す夕嵐
14 湯殿は竹の簀子侘びしき
から、
15 茴香の実を吹落す夕嵐
16 僧やゝさむく寺にかへるか
へ。
茴香の実を吹落すほどの夕嵐に肌寒さを覚えたのか、僧衣をひるがえしながら通りかかった僧は、これから自分の寺へ帰るのだろうか。
室内から屋外へ、旅人から僧への変化ですね。
15・14番の視点は「簀子侘しき」と感じている旅人、一方、15・16番の視点は寺へ帰るとおぼしき僧を見送る者の視点、このさりげない視点の変化も見逃せません。
秋も深まったころの風情に、「寺にかへるか」という疑問の提示が効果的に働いています。
きょうはここまでにしまスゥッ・・・(ーoー)y゜゜゜