令和6年6月7日の大阪府議会一般質問より、私立高校等授業料無償化制度の影響や効果と公立定員割れの状況と今後のあり方に関する、民主ネット・野々上愛府議の質疑を書き起こしました。

 

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7:00~

野々上議員:次のテーマに移りまして、大阪の私立高校等授業料無償化制度について伺います。

 

今年度の高校3年生から段階的に所得制限を撤廃、私立高校等の授業料を完全無償化する新制度が始まりました。

 

新制度決定後に実施された今春の高校入試では、公立高校、府立高校が70校の定員割れとなり、大きな衝撃を持って受け止められているところです。

 

授業料無償化制度拡充による大きな影響があったものと考えます。

 

新制度に対する保護者の期待も大きい一方、大阪府の補助上限である標準授業料63万円を超える授業料を各学校が負担する、いわゆるキャップ制の導入などから、教育の質の低下を懸念する声もあります。

 

今年1月に行われた大阪私学振興大会では、このことに対する強烈な意見表明がありました。保護者負担の軽減を歓迎する声もある一方、見えにくい学校負担の増大など大きな不安の声があるのもこれまた事実です。授業料完全無償化は全国でも例のない取り組みで、この制度が大阪の教育に与える影響を、独自に、中長期的に検証・評価していく必要があると考えます。

 

そこでまず、今回の高校入試結果から、新制度の影響をどのように受け止めておられるのか、また今後、新制度がもたらす影響や効果をどのように評価していくのか、教育長にお伺いいたします。

 

 

水野教育長:まず新制度の影響に対する受け止めについてですが、本年度の高校入試において、府内私立高校志願者に占める専願受験者の割合が、制度創設以降、初めて30 %を超えました。このことは、新制度によって、家庭の経済的な理由に関わらず、学びたい学校を自由に選択できる機会が広がり、私学を専願で志望する生徒・保護者が増えたものと考えております。

 

次に、新制度の評価についてですが、本制度は、授業料完全無償化と教育の質の向上の両立を図るという基本的な考え方のもと制度設計をしたところでありますが、今後、新制度の影響や効果を検証していくことは重要と認識をしております。

 

新制度は開始したばかりであり、直ちに影響や効果を図ることは難しいと考えておりますが、本年度以降も引き続き、私立高校生に対して高校選択等に係る満足度調査を実施し、新制度が高校進学に与えた影響を把握していきます。

 

また、今年度より新たに行う知事と私学団体の意見交換の場等を通じて、現場の意見も聞きながら、大阪の教育の質や学校法人に与える影響や効果などを検証してまいります。

 

 

野々上議員:ご答弁いただきました。

 

実は私も今、中学生の保護者でして、やはりこの保護者負担が減るということは、保護者友達の間でも非常に歓迎して受け止められているのは事実であります。

 

一方で、満足調査だけに終始してしまうと、本来の教育の全体での評価というのが見えにくくなってしまうのではないか。これ中長期的な課題かと思いますので、ぜひどういった観点から評価検証できるかということも含めて、慎重な議論を積み重ねていただければと思います。

 

さて、先の質問にもありましたが、今春の公立高校70校定員割れ、非常に大きな影響が現れたと考えております。70校個別の状況を見れば、定員割れが数名程度である学校もありまして、個々の学校についても慎重に分析していく必要があると考えますが、一方で、全体の志願倍率が下がる中、特定の高校への人気が集中し、いわゆる文理学科を備える高校では軒並み高い倍率となり、多くの不合格者を出すなど、課題も大きいように感じます。

 

志願割れ70校という数字だけを見れば、大変厳しい状況であるとも思いますが、これらの状況も踏まえ、今回の公立高校の入試結果については、どのように受け止められているのか、引き続き教育長にお伺いいたします。

 

 

水野教育長令和6年度選抜の実施にあたりましては、これまで多数の不合格者を生じていた学校を中心に募集学級数を増やしたことにより、高倍率であった学校の志願倍率の低下が認められました。一方、新たに私立高校等の授業料完全無償化等の影響もあり、70校において定員割れとなった結果につきましては、真摯に受け止めております。

 

今後多様化する中学生や保護者のニーズに一層答えていけるよう、現在、学校教育審議会におきましては、府立高校改革の具体的な方向性と、それを踏まえた入学者選抜制度のあり方について、議論いただいているところです。

 

本審議会の答申を踏まえ、望ましい府立高校のあり方や入学者選抜制度について検討してまいります。

 

 

野々上議員定員割れとなりました高校には、大阪府立学校条例がある限り、数人の定員割れでも再編整備の対象となり得るというプレッシャーが大きくのしかかります。

 

今後、授業料無償化制度が完成に向かう中で、府立高校のあるべき姿、これをしっかりと議論し、位置づけていただきたいと思います。

 

地域では、多様な子どもたちが公立高校を選び、通っている実態があります。

 

進学できる高校が地元にあるということは、公立高校の果たすべき大きな役割でありますが、老朽化する学校施設や全国ワーストに上る不登校生徒数など、多くの課題があります。

 

さまざまな背景のある生徒を受け入れている府立高校です。

 

受け入れた生徒がしっかりと学び、卒業できるよう、在学中のサポート体制の充実についても併せてお願いをいたします。

 

そして、何より、今般の授業料無償化制度により、生徒一人当たりの公費投入額が私学には100万円程度になることが見込まれる一方で、現在、府立高校を学校ごとに見ると一人当たり60万円に満たない程度の公費投入しか見られない学校もあり、公私のフェアな競争条件が損なわれている点が大きな問題と考えます。

 

公立への思い切った予算支出があって初めて、公私間の切磋琢磨が成立すると、この点は指摘をしておきたいと思います。

 

(※誤字脱字はご容赦を。正確な情報は公開動画をご覧ください。)