帝国歌劇団の太正十二年夏公演「愛ゆえに」主題歌。
 ゲーム「サクラ大戦」には舞台の様子は出てくるが、歌は使われていない。
 CD「帝撃歌謡全集」に初出、翌1997年に発売されたドラマCDで舞台で歌われる様子が一部流れる。
 フランス革命を背景にした恋の歌で、シャンソンの要素を取り入れた作りになっている。
 弦楽五部にリズム隊が加わった、ポップス・オーケストラの編成。

特徴
 テンポは73BPM(計るとわずかに遅い)。
 シャンソンの特徴である1小節が三連符×4のリズム。
 調はロ短調、イントロで一時的にイ短調に転調する。

構成
 イントロ-A-A-B-サビ-間奏-B-サビ-サビ繰り返し-C-アウトロ。
 間奏はピアノのアルペジオをバックに、ボーカル二人のセリフが入る。

編成
 第一バイオリン、第二バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、ピアノ、エレキベース、エレキギター、ドラム、クラベス、鈴(タンバリン)、シンセ、ウィンドチャイム、鐘(チューブラーベル)。

イントロ
 イントロのリズムが複雑でテンポが取りづらい。 (採譜もしづらく、ドレミ出版のピアノ譜でもズレて記載されているのだが)正確に書くと以下の楽譜のようになる。この曲は弱起ではなく、小節の頭から演奏されている。
 最初の小節は三連符をさらに3分割した音で構成されている。
 ここでは9連符に展開して書いてみたが、音の長さのイメージがおわかりいただけるだろうか?


 3-4小節目では三連符の音価が半分になったものが使われている。(つまり四分音符の1/6)


 演奏の際にも通常の指揮ではリズムが取りづらかったようで、イントロ部分の音量を上げて聞くと「指揮棒で譜面台を叩いてリズムを取っている」らしい、パシパシという音が聞こえる。
 またドラムが入る前にフェルマータがあるように聞こえるが、実際にはフェルマータではなく一定のテンポに沿ったものになっている。

歌詞の引用
 歌詞の最後の「あなたのためなら私は死ねる」は、梶原一騎原作「愛と誠」の岩清水弘のよく知られたセリフ「君のためなら死ねる!」からの引用と思われる。「愛」つながり、という事だろう。

宝塚歌劇との関連
 歌劇団、フランス革命という要素からは、宝塚歌劇団のベルサイユのばら公演主題歌「愛あればこそ」のイメージを引用したと思われるのだが、実際に聞くと音楽の作りにはそれほど類似した要素がない。テンポと、歌い出しの歌詞が「愛」であることぐらいだろうか。
 なお、2006年の歌謡ショウファイナルのテーマ曲『新・愛ゆえに』では、歌い出しの「愛」の2音が「愛あればこそ」に似せたものになっている。「愛ゆえに」のイメージの引用元を敬意を払って明確にする意図と思われる。
 余談だが、宝塚のロミオとジュリエット公演には「愛ゆえに」という歌があるが、これはフランスのミュージカルの曲を日本語訳したもので、年代も初演2010年と新しいため本曲とは関係がない。


すみれバージョン
 TVアニメ第一話には「ロミオとジュリエット」の舞台中に、すみれとマリアが歌うシーンがある。このバージョンはサントラCDなどには収録されておらず、番組内でのみ聞く事ができる。


新春歌謡ショウの持ち歌交換
 新春歌謡ショウでは、高乃麗さんがさくらパート、織姫役の岡本麻弥さんがマリアパートを歌った。公演日前半はさくらパートの高音域の声が出ずに苦しげだったが、千秋楽では裏声と地声のMIXという感じに進化して音域が拡大していた。公演中の短期間で無茶な状況に適応したものと思われる。

 2005年の「笑え!花組」では親方がさくらパート、ダンディのボスがマリアパートでショートバージョンで歌っている。


ライブバージョン
 1997年の歌謡ショウ「愛ゆえに」では公演の表題曲として、劇中劇シーンで歌われている。
 イントロに弦楽パートが流れるが、そこだけは録音された音だと思われる。歌パートから後は管楽器及びシンセとコーラスで生演奏されている。
 二番前半は歌がなくダンスのみで、大神とあやめの会話が入る。
 ライブバージョンの編曲は宮崎慎二さん。


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