おかしな気持ちだと思う。

「駆くん!苺の実がだんだん赤くなってきました!」

笑った表情とか。

困った表情とか。

ころころ変わる彼女の表情がひどく愛おしい。

「こはるが一生懸命育てたからだよ。ほら、新しい花がいっぱい咲いてきた」

抱きしめたい、キスをしたい。

それ以上の事もしたい。

こはるといるといろんな感情がわき上がる。

「そうでしょうか?そうだったらうれしいです!」

これが世間で言う恋心というものだろうか。

疼く心。

締め付けられる心臓。

あまりいいものではない気がする。

「そうだよ。ほら、こっちの実なんて甘そうに熟してる」

真っ赤に染まった苺の実に触れる。

よく熟してておいしそうだ。

「うわぁ!これが苺というものなんですね」

物珍しそうに苺を見つめるこはる。

熱心さが伝わってくる。

(・・・可愛い)

「ねぇ、こはる」

「なんですか?」

ニコニコと笑みを浮かべるこはる。

「苺と俺、どっちが好き?」

言葉を発した刹那。

こはるの顔が真っ赤になった。

「そ、それは・・・」

「どっち?」

目線をそらして、

「・・・駆くん、です」

小声で言った。

ドクり、と。

胸の鼓動が跳ね上がる。

「かわいいなぁ、こはるは」

「えぇ?!いきなりどうしたんですか?」

驚いた表情を浮かべるこはる。

不意の隙に、キスをした。

「好きだよ、愛してる」

こんな幸せな時間がいつまで続くのかなんてわからない。

もちろん、『世界』が何を命じようと壊す気にはなれない。

(・・・離したくない、ずっと・・・)

正宗の話によるともうすぐ旅が終わるらしい。

1週間、2週間先か。

その先に何があるのか、俺達はまだ何も知らない。

「私も大好きです、駆くん」

だけど、この旅にどんな結末が待っていようとも。

「・・・絶対、離さないよ」

彼女をこの手から離すことは絶対にないだろう。