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○「UNITED93」

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
ユナイテッド93


2001年9月11日、アメリカにおいて同時多発テロが発生する。
数機の民間旅客機が不審な動きを見せて航空管制センターが騒然とする中、ユナイテッド93便がテロリストを乗せて離陸する。
その後次々と事件が全貌を見せ始める中、ついにユナイテッド93便においてもハイジャックが発生、機の操縦桿はテロリストの手に落ちてしまう。
当初はなす術もなくおびえるだけだった乗客たちだったが、やがて電話を使って地上と交信するうちに事件の全貌を徐々に認識し始め、これが自爆テロであることを悟るのだが…。


9.11同時多発テロの時に、ただ一機目的を果たさずに墜落したユナイテッド航空93便での出来事を再現したドキュメンタリー的作品。


まず単純に作品として見ますと、前半、つまりアメリカン航空11便が不審な動きを始めたことが航空管制側にキャッチされてから、2機目がWTCに衝突するまでの間の航空管制センターでのやりとりや雰囲気は、過去の映画史上でも指折りと言っていいほどのリアリティがあって見ごたえ十分です。

ただし、テロリストの人間性や、後半に入ってからの乗客たちの反撃などは、あくまで限定的な情報からの推測に過ぎないこともあって、どうにも説得力がありません。
この落差は、見ていただければ一目瞭然です。


後半、乗客が結束して決起するに至る経緯に、いくつかのポイントがありました。
まず、乗客が機内電話や携帯電話で家族に遺言を残すことを考えなければなりません。
次に、たまたま自宅の家族とコンタクトをとることができた乗客が、他の事件(WTCに突入した航空機)の情報を得て、そこからテロリストの意図を類推しなければいけません。
さらにこの情報や推測は他の乗客たちとも共有されなければなりません。
同機が離陸後に起きたテロ事件から、事件をそこまで理解し見ず知らずの乗客たち同士が意識を同じくする必要があります。
「事実は小説より奇なり」とは言いますが、どうにもウソ臭く見えて仕方がありません。


しかも作品の結びが気になります。
「93便が墜落した時点で、軍用機は最も近くて160キロの距離にいた」
「大統領が撃墜の許可を出したのは、93便が墜落した後のことで、誤射を恐れた司令官はパイロット達には伝えなかった」
などなど、ブッシュ政権による言い訳のようなテロップがいくつか表示されるのです。
普通この種の作品では、事件の犠牲になった乗客への追悼や、事件の反省からどういった改革がなされて今日にいたるのかといったエピローグが用意されるのが通例ですが、そういったものは特にありませんでした。


それにテロップでは「軍用機」としていますが、低空を飛行する民間の旅客機など、現代の兵器なら歩兵携帯用のミサイルですら撃墜が可能です。

核攻撃にすら対処されていると言われるキャンプデービッド周辺の防空が、たかが民間機ごときに進入を許すほど甘いものなのでしょうか?


しかもこの事件では、93便が墜落するところは誰も目撃していません。
生存者もいません。
電話の記録など簡単に捏造できるものですし、実際にはいなかった乗客の「家族」を証言者に立てても、書類上の矛盾さえ無ければ捏造を見破ることはできないでしょう。
つまり、事故調査委員会を掌握してしまえば、あとは専門の機関がぬかりのない工作を行えば、例えこの墜落が「撃墜」によるものだったとしても隠蔽してしまうことは比較的簡単に可能なのです。
邪推でしょうか?
でも正直なところ、この作品を見て僕は一層疑いを深くしました。


もし仮に撃墜があったとしても、それはある意味仕方のないことかもしれません。
大統領は国家の指揮官であり、威信の象徴です。
これが敵に殺された、あるいは生命の危機に陥れられたとなれば、戦闘状態ともいえる状況下で国民に与える不安・精神的ダメージは凄まじいものがあります。
ですから、あるいはそういう場合での撃墜、場合によっては隠蔽も「必要悪」という考え方もあるのかもしれません。
まぁだからと言って片棒を担ぐ気にはとてもなれないのですが…。


テロ直後、ハリウッドの映画関係団体が政府への協力を宣言しました。
あれ以後に発表された湾岸・イラク戦争絡みの作品は、どうも素直な目で見ることができません。

やはり映画は映画。

利益があって続けられる営業であって、報道などとは性格が違うということは肝に銘じなければいけませんね。


ユナイテッド機とは関係の無い、前半の航空管制センターの部分のみの評価で○です。


UNITED93 - allcinemaONLINE

アメリカ同時多発テロ事件 - Wikipedia


時 間 : 111分
製作国 : アメリカ
公 開 : 劇場公開 (UIP)
初公開 : 2006/08/12
監 督 : ポール・グリーングラス
脚 本 : ポール・グリーングラス
出 演 : ハリド・アブダラ ジアド・ジャラ
     ポリー・アダムス デボラ・ウェルシュ
     オパル・アラディン シーシー・ライルズ
     ルイス・アルサマリ サイード・アルガムディ
     デヴィッド・アラン・ブッシェ トッド・ビーマー
     リチャード・ベキンス ウィリアム・ジョゼフ・キャッシュマン
     スターラ・ベンフォード ワンダ・アニタ・グリーン
     オマー・バーデゥニ アフメド・アルハズナウィ
     スーザン・ブロンマート ジェーン・フォルガー
     レイ・チャールソン ジョゼフ・デルカ
     クリスチャン・クレメンソン トーマス・E・バーネットJR.
     ライザ・コロン・ザヤス ウォレスカ・マルティネス
     ゲイリー・コモック リロイ・ホーマー
     ローナ・ダラス リンダ・グロンランド
     デニー・ディロン コリーン・フレイザー
     トリエスト・デュン ディオラ・フランシス・ボドリー
     トリッシュ・ゲイツ サンドラ・ブラッドショー
     ケイト・ジェニングス・グラント ローレン・カツゥーチ・グランドコラス
     ジェイミー・ハーディング アフメド・アルナミ
     ピーター・ハーマン ジェレミー・グリック
     タラ・ヒューゴ クリスティン・ホワイト・グールド
     マルセリーヌ・ヒューゴ ジョジーン・ローズ・コリガン
     シェエン・ジャクソン マーク・ビンガム
     ジョー・ジャムログ ジョン・タリナーニ
     コーリイ・ジョンソン ルイス・J・ナックII世
     J・J・ジョンソン ジェイソン・M・ダール
     マサト・カモ 久下季哉
     ベッキー・ロンドン ジーン・ピーターソン
     ピーター・マリンカー アンドリュー・ガルシア
     ジョディー・リン・マクリントック マリオン・R・プリトン
     ナンシー・マクダニル ロレイン・G・ベイ
     リビー・モリス ヒルダ・マーシン
     トム・オルーク ドナルド・ピーターソン
     サイモン・ポーランド アラン・アンソニー・ビーヴァン
     デヴィッド・ラッシュ ドナルド・フリーマン・グリーン
     エリック・レッドマン クリスチャン・アダムス
     マイケル・J・レイノルズ パトリック・ジョゼフ・ドリスコル
     ジョン・ロスマン エドワード・P・フェルト
     ダニエル・サウリ リチャード・ガダーニョ
     レベッカ・スカル パトリシア・カッシング
     クロー・シレーン オーナー・エリザベス・ワイニオ
     ベン・スライニー ベン・スライニー
     オリヴィア・サールビー ニコール・キャロル・ミラー
     チップ・ジエン マーク・ローゼンバーグ
     レイ・ジンマーマン クリスティン・シュナイダー